研究課題/領域番号 |
15J06471
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅 大暉 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 微生物起源鉄酸化物(BIOS) / 走査型透過X線顕微鏡(STXM ) / 希土類元素(REEs) / Iron hydroxides / 隕石中有機物分析 / Biomarker / adsorption / X線吸収微細構造(XAFS) |
研究実績の概要 |
本研究では,経年や変成に強い無機物質(希土類元素:REE)をバイオマーカーとして利用する手法の確立を最終目標としている。今年度は,①広島大学内のぶどう池を模擬した環境での微生物起源鉄酸化物(BIOS)の合成と,それに対するREE吸着実験を実施してREEパターンを求めることに加えて,②BIOS中の微生物表面にREEが吸着しているかをX線顕微鏡(STXM: 30nmの空間分解能を持つ)で確認し,最終的にBIOSで報告されているHREE(重希土類)上がりのREEパターンが微生物表面へのREE吸着に起因しているかを確認することを目指して研究を実施した。 各項目と実施状況は以下の通りである。(i)小型恒温槽の購入 ⇒ 達成(大学所有の物を使用できることになった)。(ii)培養した微生物へのREE吸着 ⇒ 達成。(iii)ぶどう池模擬系でのREE吸着試料の作製 ⇒ 達成,BIOS形成初期段階では微生物への吸着の影響が確認される。(iv)STXMへの蛍光検出器の設置 ⇒ 未達成,放射光施設・装置に難あり。(v)深さごとのBIOSのSTXM測定 ⇒ 他研究者とのバッティングのため実施できず。(vi)BIFのREEパターン測定 ⇒ 深さごとのBIOSのREEパターンが測定出来ないため詳細な分析は必要なし,論文化の際には先行研究結果を引用することにした。(vii)BIOSのREEパターンが微生物表面のリン酸基とのREEの吸着に起因しているかの考察 ⇒ 可能性は高いが,本研究結果だけでは断定はできない。(viii)STXMによる天然BIOS中での微生物代謝に関連した鉄化学種変化の直接観測 ⇒ 現在国際誌にて査読中。(ix)STXMによる隕石中有機物のその場分析 ⇒ 現在論文執筆中,年度前期に投稿予定。火星起源隕石の分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
28年度は,前年度に確立した「STXMによる微生物測定プロトコル」に従って微生物とREEsの測定を行った。今年度は分析機器の問題から,吸着したREEsの直接観測には至っていないが、前年度に得た結果である「STXMによるBIOS中の微生物とそれらが生成する鉄鉱物種の関係」から得られた結果の追加実験を実施した。この結果は既に論文化しており,現在国際誌にて査読中である。深さごとのBIOSのSTXM測定が他研究者とのバッティングのため実施できない等の予期せぬ事態は起きたものの,当初とは違う側面からの分析結果を報告することができた。 また培養期間中などで時間的余裕のある際には、前年度に確立した「STXMに電子顕微鏡と集束イオンビームを組み合わせた地球外物質に微量に含まれる炭素成分の局所STXM測定」プロトコルに従った分析を行った。こちらの結果は試料作製プロトコル(メソロジー)も含めて,現在論文化しており,近日中に国際誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は本来予定している実験であるSTXM分析を行い,REEsの検出に挑む(STXMへの蛍光X線検出器の導入を試みる)。またこれまでの分析からSTXMによるREEs検出は困難である可能性もあるため,STXM以外の検出方法としてμ-XRF-XAFSや同位体顕微鏡(NanoSIMS)なども活用してREEsの可視化に挑む。 また,サブテーマとして進めている「STXMによる隕石中有機物のその場分析」に関しては,29年度初旬に炭素質コンドライトの分析結果を論文化して,国際誌に投稿する。加えて火星起源隕石中の有機物の分析を引き続き行う。こちらの結果は現在解析中であるため詳述はできないが,有機物は炭素質コンドライトのものに比べると熱変性を受けておらず,二次鉱物を産出している。また同位体値(δD)は火星表層の値に非常に近いものを得ているなど興味深いものとなっている。そのため29年度は上記の微生物研究に加えて,こちらの分析・解析にも力を入れ,目処が立ち次第論文化し国際誌へと投稿する。
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