光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は光の干渉を利用して物質の断層構造を非接触・低侵襲に測定する手法であり、医療をはじめとした広い分野で利用されている。OCTではサンプルの持つ周波数分散によって分解能が低下するという問題があり、それを解決する手法として、量子もつれ光子対を用いた手法である量子OCTが提案されている。しかし、量子OCTで用いられる量子もつれ光源は一般に低出力であるため測定に長時間かかり、また測定画像に量子干渉に起因するアーティファクトが出現し画像を乱してしまうという問題がある。 本研究では、量子OCTの時間反転系を用いることで、分散の影響を受けないOCTを古典光学的に実現できることを実験的に実証した。実験ではサンプルとして顕微鏡用のカバーガラスおよび100円硬貨を用いて測定のデモンストレーションを行い、分散の影響をキャンセルできていること、量子OCTと比べはるかに高出力であること、およびアーティファクトを除去できることを実証した。さらに、分散消去OCTの古典光学的実現の先行研究であるチャープパルス干渉法(CPI)と比較して、チャープパルス光が不要であること、およびCPIにおいて測定画像に現れるバックグラウンドノイズが除去できるという点にアドバンテージがあることを示した。 本研究成果は、様々な国内学会、ワークショップ(QIT33、QUATUO研究会、QMKEK6、日本物理学会第71回年次大会)で発表、議論した。また国際学会QCMC2016にても発表予定である。さらに学術雑誌(Optics Express)に投稿し、2016年4月9日に掲載された。
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