研究課題
前年度、ミクロオートファジーによる分解基質を探索した結果、オートファゴソーム外膜に局在するAtg9がESCRT複合体を介したミクロオートファジーにより分解することを明らかにした。本年度はさらなるこの分解基質を探索した。まず、Atg9同様にオートファゴソーム外膜に局在すると考えられる膜タンパク質Atg27に着目した。Atg27はAP-3経路により、ゴルジ体から液胞膜へと直接、運ばれ、主に液胞膜に局在する。富栄養条件下では、Atg27は液胞膜に局在するが、栄養源飢餓条件では、Atg27は液胞内腔へと運ばれた。この液胞内腔への輸送もESCRT複合体を必要とした。以上より、Atg27もESCRT複合体を介したミクロオートファジーにより分解を受ける可能性が示唆された。この分子機構を探索するため、Atg27との相互作用が報告されている因子の欠損株におけるAtg27の局在を観察した。すると、エンドソームからゴルジ体への逆行輸送に必須なレトロマーを欠損させた際、Atg27がエンドソームに局在することを見出した。Atg27がどうやってエンドソームに蓄積するのか、調べた結果、Atg27は液胞膜からエンドソームへ運ばれることを見出した。さらに、この液胞膜からエンドソームへの逆行輸送に必要なタンパク質を探索し、Snx4/41/42複合体を同定した。Snx4/41/42複合体はPI3P依存的に液胞膜上に集積し、Atg27の液胞膜からエンドソームへの逆行輸送に機能していた。これらの結果より、Atg27はAP-3経路により、ゴルジ体から液胞膜へ運ばれた後、Snx4/41/42複合体を介して、液胞膜からエンドソームへと逆行輸送されることを明らかにした。これまで液胞膜からエンドソームに逆行輸送される経路は同定されておらず、Atg27は液胞膜からエンドソームへと運ばれるはじめての膜タンパク質である。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は昨年度に引き続き、ミクロオートファジーの研究を行い、Atg9だけでなくAtg27がESCRT複合体を介したミクロオートファジーにより分解されることを見出した。また、その研究過程でAtg27という膜タンパク質が液胞膜からエンドソームへ逆行輸送されることを見出した。この研究結果は液胞膜上に膜タンパク質の量的制御を行う監視システムが存在することを示唆する。不必要になった膜タンパク質はユビキチン化を受けることで分解を介した下方制御を受ける。一方、これらの監視システムを通過した膜タンパク質はSnx4/41/42複合体を介して、リサイクルされる。このように細胞は極めて効率的に膜タンパク質を“選別”そして”リサイクル”していることが明らかとなった。この知見はこの知見はこれまでただの“ごみ箱”と考えられていた液胞が“”タンパク質の仕分け“という新たな機能を持つことを提唱するものである。そのため、本年度は極めて良好に研究が進んだと考えている。
液胞膜はオートファゴソームやエンドソームと融合する度に、これらのオルガネラから余剰な脂質膜が液胞膜へ流入する。液胞膜の大きさを一定に保つためにはこうした余剰な脂質膜を分解もしくはリサイクルする必要があるがその分子機構は分かっていない。本年度の研究により、液胞膜はESCRT複合体を介して、液胞膜を分解する一方で、Snx4/41/42複合体を介して、液胞膜のリサイクルを行っていることが明らかとなった。しかし、ESCRT複合体の欠損株、SNX4/41/42複合体の欠損株はともに正常な大きさの液胞を保持している。このことは液胞膜のサイズを規定する他の分子機構の存在を示唆する。今後は液胞が大きくなる変異体解析を通じて、この分子機構に迫っていきたい。
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Dev. Cell
巻: 38 ページ: 86-89
10.1016/j.devcel.2016.06.015.