研究課題/領域番号 |
15J06834
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福家 佑亮 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ロールズ |
研究実績の概要 |
本研究(研究課題:ロールズの政治的転回についての研究)の最終的な目標は以下のとおりである。即ち、経済学や心理学などの経験科学や我々の道徳的直感との整合性を考慮しつつ、普遍的に正当化可能な「包括的」正義の原理の彫琢を試みた『正義論』のロールズと、普遍的な正当化のプロジェクトを放棄し、民主主義や人権についてある程度文化を共有している西洋の先進諸国において、合意が調達可能な正義の政治的構想の提示に終始する『政治的リベラリズム』のロールズの間に生じたとされる政治的転回について、正義の原理に従い続けることが可能かどうかという安定性を巡る問題に関する連続性に着目して、両者の関係を整理し統一的なロールズ解釈を与えることが本研究の目的である。 以上の研究課題を達成するために今年度は研究課題α:『正義論』以降におけるカント的人格概念の位置づけの解明、の達成を試みた。具体的には、現在の英米圏で盛んに議論されている理想理論と非理想理論を巡る論争から得られた知見を用いつつ、『正義論』で採用されている方法論の内的整合性を明らかにすることを試みた。 研究課題αを達成するために(A)安定性を巡る議論と『正義論』における方法論的立場との一貫性、及び(B)自尊心と格差原理の関係について検討を加えた。その結果として、(a)安定性を論証するに当たって嫉妬の問題を排除することは、経験科学の知見を重視する『正義論』の方法論と必ずしも矛盾しないこと、(b)嫉妬が激化せず自尊心が保たれる社会の条件と、ロールズが提示する格差原理の正当化は両立しえないというG.A.コーエンの解釈を退け、格差原理が支配する社会でも自尊心が十分に保たれることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題α:『正義論』以降におけるカント的人格概念の位置づけの解明 をほぼ達成できたためおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題αが達成されたため2016年度は研究課題β:『政治的リベラリズム』における安定性問題の解明を遂行する。研究課題βを遂行するにあたっては、研究課題αの遂行においても部分的に触れたとおり、格差原理を研究の中心とする。具体的には、ロールズの正義論を現代の平等を巡る哲学的論争の中に位置付け、格差原理を社会的平等論の一種として解釈したうえで、社会的平等論と運平等主義の関係を論じながら、格差原理が安定性に対して持つ重要性について明らかにする。
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