研究課題/領域番号 |
15J06850
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大森 仁 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 矛盾許容型論理 / 否定 / 含意 / 命題の整合性 / 真理論 / 素朴集合論 / 論理的多元主義 |
研究実績の概要 |
まず哲学的課題については、一年目に検討した論理学の理解に基づき、真矛盾主義と論理体系との関係に取り組むこと、より具体的には真矛盾主義の主張がどのように論理体系に反映されるべきであるかに注意し、従来の真矛盾主義と矛盾許容型論理との関係について一定の結論を得ることを予定していた。この点については、まず真矛盾主義の主張において重要な役割を果たす否定について、それが真な文と偽な文とをつなぐ論理結合子である、という立場を擁護するとともに、他の立場の問題点を論じた。その上で、真矛盾主義と矛盾許容型論理との関係は、一年目に考察した論理そのものと論理を運用するための枠組みとの区別によってより明快になることを論じた。
次に論理学的課題については、基本となるBelnap-Dunnの体系を出発点とした上で、命題の整合性のみを加えた体系及び命題の整合性とPriestやBeallらによって研究されている含意とを加えた体系の構築を予定していた。この点については、まず命題の整合性のみを加えた体系について、特に様相性の理解と関連付けることで興味深い結果が得られることが明らかになった。また命題の整合性と含意とを加えた体系の構築に関しては、特にPriestが"In Contradiction"で提案したものの、それほど研究の進んでいない含意に着目し、これを命題の整合性とを組み合わせた体系の公理化に成功した。
2016年度は、上記の哲学的課題及び論理学的課題に集中的に取り組むことを予定していたが、数学的課題についても一年目の成果を発展させる形で素朴集合論について研究を続け、一定の成果を得た。また真理論についてもこれまでの研究において未解決であった問題、具体的にはBelnap-Dunnの体系を出発点とした上で、命題の整合性のみを加えた体系に基づく真理論の可能性について、これが実際には不可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
哲学的課題については、当初予定していなかったものの近年活発に論じられている論理的多元主義への影響も考慮に入れることになった。この点については、論理的多元主義についての論文集への寄稿も依頼されており、三年目に論文を完成させる予定である。論理学的課題については、当初想定されていなかった次の二つの成果を得た: (i) Priestによって提案された含意の研究に関連して、Priestの含意よりも弱い体系における古典的否定の取り扱いに関して一定の成果を得た。 (ii) 命題の整合性の研究に関連して、従来矛盾許容型論理の研究においてあまり着目されてこなかったHalldenの体系を命題の整合性を含む矛盾許容型論理として位置づけることに成功した。
数学的課題については、真理論において未解決であった問題の否定的解決に成功し、今後の研究を進める上で鍵となる成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
哲学的課題については、まず寄稿を依頼されている論理的多元主義についての論文集のための論文を完成させる。さらに、素朴集合論及び真理論に関する数学的な成果を一定程度まとめた上で、真矛盾主義の哲学的な問題の一つであるPrinciple of uniform solutionについて検討を行う。
論理学的課題については、2016年度に得た成果をまとめて論文を完成させ、寄稿を依頼されている、命題の整合性を含む矛盾許容型論理に関する特別号に投稿する予定である。
数学的課題については、命題の整合性のみを加えた体系に基づく真理論に関する否定的な結果を踏まえ、三年目においてはGoodshipの見通しに基づく真理論及び素朴集合論がどこまで展開できるかを可能な限り検討することを計画している。
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