研究課題/領域番号 |
15J06855
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 俊輔 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | Gromov-Hausdorff収束 / Fano-Ricci極限空間 / Kahler-Ricci soliton / 反標準的balanced計量 / 反標準的Chow安定性 |
研究実績の概要 |
1.二木昭人氏、本多正平氏との共同研究で、コンパクト Kahler 多様体上の重み付き∂-ラプラシアンの固有値が測度付き Gromov-Hausdorff 位相に関して連続であることを示した。さらにこれをFano多様体の列に適用することで、almost smooth な Fano-Ricci 極限空間が Kahler-Ricci limit soliton を許容し、かつその上の L2 正則ベクトル場全体が Lie 括弧積について閉じているとき、この Lie 代数が滑らかな Kahler-Ricci soliton 上の正則ベクトル場のなす Lie 代数と同じ構造をもつことを示した。 2.高橋良輔氏と共同で Fano 多様体上の反標準的 balanced 計量の存在問題について研究を行った。 反標準的 balanced 計量は通常の balanced 計量とは違い Fano 多様体でのみ定義されるもので、量子化されたDingの汎関数の臨界点という微分幾何的な特徴付けが Berman-Boucksom-Guedj-Zeriahi により与えられていた。一方で反標準的 balanced 計量と安定性の関係は不明であった。通常の balanced 計量の場合に計量の存在が漸近的 Chow 安定性と同値であることが Zhang により示されていることを鑑みると、反標準的 balanced 計量に対応する何らかの安定性があると考えるのは自然である。そこで Berman-Witt Nystrom が定義した量子化された二木不変量を用いて「反標準的 Chow 安定性」という概念を導入し、反標準的 balanced 計量の存在が反標準的Chow安定性を導くことを示した。また我々の安定性と古典的な Chow 安定性との関係について、(古典的な)漸近的 Chow 安定性ならば「漸近的反標準的 Chow 安定性」であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kahler-Ricci soliton やその特殊な場合である Kahler-Einstein 計量に関する幾何について Riemann 幾何的な結果と代数幾何的な結果の2つを得ることができたため。今年度用いた手法はいずれも予定していた研究手法である。
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今後の研究の推進方策 |
1.Fano 多様体の列の Gromov-Hausdorff 極限を調べる。 2.今年度の研究を参考にして, 量子化された Kahler-Ricci soliton の障害になる有限次元的な安定性を定義し, 他の GIT 安定性と比較する。 3.端的 Kahler 計量を臨界点にもつ汎関数である modified K-energy が Bergman 計量の空間上でどのように振る舞うか調べる。
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