研究課題/領域番号 |
15J06887
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡本 実哲 慶應義塾大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | Ausubel Auction / Ascending-bid Auction / Efficient Auction / Ex Post Equilibrium |
研究実績の概要 |
現在、日本の財政状況は逼迫しており、基礎的財政収支が赤字であるばかりか、国債の利払い費にまでも毎年10兆円を支払っている。本研究の目的はオークション理論を用いて国債の売り方を工夫し、利払い費を抑制することである。 2015年度は、Ausubelオークションという入札方式について研究を行った。この入札方式は、2004年にAmerican Economic Review誌に掲載されたLawrence Ausubel教授の“An Efficient Ascending-bid Auction for Multiple Objects”という論文によるものである。私の研究では、Ausubel教授の2004年の研究には間違いがあり、オリジナルのAusubelオークションのもとでは不具合が発生し得ることを証明した。加えて、オークションルールを修正し新たなルールのデザインを提案している。 Ausubelオークションは非常に注目されており、後続の理論・実験研究は多数ありGoogle Scholar Citationsによればその引用件数は700件を超える。その重要な研究に間違いがあったということは学術的な意義がある。また、今回の理論的な不具合は他のオークション方式にも起こり得るため、他の研究にも派生する可能性がある。そして、Ausubelオークションは国債など同じ物を複数個売る際に用いられるオークション方式として実用化が期待されている。私の研究は、実用の際に起こり得る不具合を事前に発見し、修正した新たなオークション方式を設計したということで実務面での貢献も大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目標は、日本の国債市場を設計するにあたってひとつオークション方式を設計することであった。そして初年度の研究では、Ausubelオークションを修正した形で新たなオークション方式を設計できた。不具合の発見から入札方式の修正について“A Dynamic Auction That Improves the Ausubel Auction”という論文でまとめ、大阪大学社会経済研究所の『森口賞』にて入選している。国債オークションに向けて、十分な評価を得る入札方式を設計できたということで進捗状況は順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、「同じ物を複数個売る」のに優れたオークション方式の設計ということで理論的な研究を行ってきた。今後は「国債を売る」のに優れたオークション方式の設計と研究内容をより特化させた形で行っていきたい。また理論的な研究だけでなく、現実のデータを用いた実証研究や、自身の設計したオークション方式の実験研究なども行っていきたい。
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