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2015 年度 実績報告書

Belle II実験及びLHC実験における標準模型を超えた物理の探索

研究課題

研究課題/領域番号 15J06917
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

坂木 泰仁  総合研究大学院大学, 高エネルギー加速器科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワードQCD / コライダー物理 / jet substructure / Bの物理 / セミレプトニック崩壊 / モンテカルロシミュレーション
研究実績の概要

本研究課題の主題は、Bファクトリー実験やLHC実験等の大規模実験における標準模型を超えた物理の探索である。それらの実験がカバーす る探索領域は異なっており、相補的研究が必要である。以後、Bファクトリー実験に関係するもの(研究1)と LHC 実験に関係するもの(研究2)に分類し、それぞれの成果について述べる。

研究1における成果として、現在の観測結果が示唆している新物理の領域はいくつかあるが、それらの正誤をBelle-II実験のどの段階で検証可能かを示した。また、 Belle-IIで最終的に到達可能な新物理のエネルギースケールをあらゆるシナリオに関して計算し示した。
研究2における成果として、ジェットを構成している粒子の運動量から定義される、ある2つの物理量の相関はジェットの内部構造に関する情報を多く持っていることを指摘した。また、ジェット近傍に存在してい るエ ネルギーの小さな別のジェットのもつ性質がクォーク又はグルーオンを起源とするジェットで違っ ていることを示し、その性質と先ほどあげた2つの物理量等を用いた多変数解析を行うことで、ジェットの起源を区別する性能が向上する事を示した。研究2において、既存の良く知られているプログラムを用いてLHCのイベントをシミュレートしてきたが、ジェットの内部構造はプログラムごとで異なる性質を与えることを問題視した。つまり内部構造を用いた解析の定量的な評価が行えない。その違いの原因を探るために、プログラム内の発展変数と呼ばれる変数に着目した。従来のプログラムでは、それぞれ異なる発展変数が使われているが、私は一般化された発展変数を定義し、それを実装した新たなイベント生成プログラムを作成し、発展変数がジェ ットの内部構造に与える影響を調べた。特にジェットを構成している粒子の分布の広がりは、発展変数と関係する事を示し た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画は大きく次の5つにまとめられる。(1) B->D(*)tau nu過程の運動変数分布の計算を行い、それらの理論不定性を評価する。(2) 現在、実験を説明できている模型のどれが正しいかを、判別するのに必要な観測量とデータ量を調べ、最終的に Belle IIで到達しうる新しい物理の効果の制限を計算し、測るべき観測量を明らかにする。(3) 摂動論的量子色力学の枠組みで、新しく導入した観測量の、クォークとグルーオンを分離する能力を予想する。(4) Pythia6, Pythia8, Herwig++などのモンテカルロ・シミュレータを用いて、新しく考案した観測量を計算する。(5) ジェットの横運動量やジェットの半径などの設定を変えてみて、観測量の性能を評価し、それぞれのシミュレータによる結果が異なるようであれば、理由を考える。以上の5つの計画どれも達成されている。

今後の研究の推進方策

LHC実験における現象論に関する研究を主に行う。LHC実験は新しい物理の探索や、ヒッグス粒子の性質の決定を主なモチベーションとしているが、それらにジェットの性質に着目した解析手法を用ることで迫って行くことを主な目標とする。
去年度に引き続き、まずはジェットの起源がクォークかグルーオンかを調べる手法(クォーク・グルーオン分離)や計算アルゴリズムを確立する。そして実際にそれらを新物理探索に応用する。ターゲットとして、超対称模型におけるグルーイーノ・スクォーク対生成課程や、グルーオン対消滅におけるinvisible崩壊探索などを想定している。クォークまたはグルーオンジェットはイベントジェネレーターと呼ばれるプログラムでシミュレーションされる。イベントジェネレーターは複数あるが、これまでの研究において、それらが予言するジェットの内部構造の性質は異なっている事がわかった。その違いは、実際にクォーク・グルーオン分離を応用する場合に系統誤差として取り入れられ、新物理探索の感度を下げる要因となる。よって、それらを解消する事の必要性や、どのような観測量を調べる事が必要かを、実験グループやイベントジェネレーターのコミュニティに伝える。
Bのセミレプトニック崩壊に関して、LHCbやBelleからの新しい結果が報告された。これらを踏まえ、この先LHCとBelleでどのような連携が必要か考える。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Evolution variable dependence of jet substructure2015

    • 著者名/発表者名
      Y. Sakaki
    • 雑誌名

      JHEP

      巻: 8 ページ: 100 ~ 116

    • DOI

      10.1007/JHEP08(2015)100

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Associated jet and subjet rates in light-quark and gluon jet discrimination2015

    • 著者名/発表者名
      B. Bhattacherjee, S. Mukhopadhyay, M. M. Nojiri, Y. Sakaki, B. R. Webber
    • 雑誌名

      JHEP

      巻: 4 ページ: 131 ~ 153

    • DOI

      10.1007/JHEP04(2015)131

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Probing New Physics with q2 distributions in B -> D(*)tau nu2015

    • 著者名/発表者名
      Y. Sakaki, M. Tanaka, A. Tayduganov, R. Watanabe
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 91 ページ: 114028, 1 ~ 9

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.91.114028

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] QCD jet substructure at the LHC2015

    • 著者名/発表者名
      坂木泰仁
    • 学会等名
      MCnet
    • 発表場所
      ベルギー、スパ
    • 年月日
      2015-06-30
    • 国際学会
  • [学会発表] Evolution variable dependence of jet substructure2015

    • 著者名/発表者名
      坂木泰仁
    • 学会等名
      MC4BSM
    • 発表場所
      アメリカ、シカゴ
    • 年月日
      2015-05-18 – 2015-05-21
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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