LHC実験における現象論に関する研究を主に行った。LHC実験は新しい物理の探索や、ヒッグス粒子の性質の決定を主なモチベーションとしているが、それらにジェットの性質に着目した解析手法を用いることで迫って行くことを主な目標とした。去年度に引き続き、ジェットの起源がクォークかグルーオンかを調べる手法(クォーク・グルーオン分離)に関する研究を行い、それを新物理探索に応用する手法を考案した。特に、LHCで超対称模型で予言されるグルイーノが対生成され、それが2つのクォークとニュートラリーノに崩壊する基本的なトポロジーを主な研究対象とした。まず、このシグナルとバックグラウンドにおけるクォークジェット比率に違いがあることを定量的に示した。各ジェットがクォークとグルーオンのどちらかを起源とするかを特徴づけるために、ジェットの内部構造から定義される3変数を多変量解析することで得られたBDT変数を用いた。事象の中の4つのジェットに対するBDT変数と、従来の解析で用いられる運動変数を再度多変量解析することで、グルイーノとニュートラリーノの発見可能領域を200から500GeV広げることができることを示した。また、本研究のシミュレーションはPythiaとHerwig++を用いて行われたが、それぞれのパートンシャワージェネレータでシミュレートされるクォークジェットとグルーオンジェットの内部構造には大きな違いがあることも指摘し、それはバックグラウンドの排除能力に最大で約2倍の違いを生むことを示した。
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