研究課題/領域番号 |
15J06957
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安居 佑季子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | イネ / OsWOX4 / 葉 / 発生 / 維管束 / 細胞周期 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
OsWOX4はイネの茎頂分裂組織で機能し、葉原基でも発現する。本研究は、OsWOX4に着目し、葉の初期発生を明らかにすることを目的としている。 デキサメタゾン (DEX)によりOsWOX4ノックダウンを誘導できる株を用いて解析した。DEX処理により、葉の成長が著しく阻害されたため、切片での観察を行った。その結果、液胞の形態に異常が生じていた。DEX処理により、液胞は大きく歪になり、また、維管束や葉の周縁部など、コントロールでは液胞化が進んでいない部分の細胞でも液胞化が進行した。細胞周期S期とG2/M期のマーカー遺伝子の発現を解析したところ、どちらも、DEX処理により発現が著しく低下していた。これらから、OsWOX4がノックダウンすることで、葉の細胞が正常に制御されなくなっていると考えられた。 次に、形態に対する機能を明らかにするため、一過的ノックダウンの系を確立したところ、多面的な表現型が見られた。この中で、細胞分化の解析がしやすい維管束の解析を進めた。DEX処理をした植物では、木部と師部の発達が著しく阻害された。細胞の形態が判断しやすい木部細胞を用いて、組織分化を定量的に解析した。その結果、OsWOX4ノックダウンにより、分化した木部細胞の成長が阻害されると同時に、新たにできる木部細胞の数が減少した。これらから、OsWOX4は維管束における組織分化と、細胞運命の決定に機能していると考えられた。 OsWOX4の機能を包括的に理解するため、誘導系株の誘導後3時間、12時間後の植物を用いてトランスクリプトーム解析を行った。個別の発現解析をしていた遺伝子を確認したところ、同様の結果が得られていたことから、信頼性のあるトランスクリプトームデーターであると考えられた。また、3時間後に有意に発現が変動した遺伝子は全て増加していたことから、OsWOX4は転写抑制因子であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた形態学的な解析とトランスクリプトーム解析を進めることができた。形態学的な解析では維管束中心に解析を進め、また液胞の形態異常の表現型では細胞周期制御にOsWOX4が機能していることを示した。また、信頼性のあるトランスクリムトームデーターを得ることができた。このデーターは、今後、OsWOX4の機能解析を行うにあたり大変重要な情報源になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
得られたトランスクリプトームデーターの詳細な解析を行う。まず、これまでに明らかにした葉原基の多面的な表現型に関連があると考えらえる遺伝子発現を確認し、OsWOX4との関連が示唆されたものについてはin situ ハイブリダイゼーション等の実験により個別に解析を進める。また、GO解析等により、OsWOX4が制御する遺伝子ネットワークの解析も進める。これらの解析と、さらなる形態的な解析を進めることで、OsWOX4がどのようにして、葉の発生を多面的に制御しているかを明らかにしていく予定である。
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