昨年度から解析を行っていたHammer toe (Hm)マウスについて、ゲノム編集と遺伝子発現解析を組み合わせることで、新規エンハンサーが発生関連遺伝子の発現を誘導するためのゲノム構造が明らかになった。1つのエンハンサー配列ではなく複数のエンハンサーが協調的に働くことと、その並び方あるいは方向が発現量に影響することが明らかになった。これらの分子生物学的試薬について、試薬を購入した。 また、特別研究員として3年間取り組んだ成果を論文として発表するに至った。その際のレビュワーとのやりとりにおいて要求された確認実験のために試薬を購入し、使用している。掲載誌はProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaで、本年度12月にオンライン上に、1月に誌面に掲載された。 昨年度から準備していたESCO2を試薬誘導的にノックアウトする系統については、qPCR解析による発現解析を行い、ESCO2遺伝子の欠失に伴う発生関連遺伝子群の発現変動を調べた。Creタンパク質を核内に局在させるためのTamoxifenは母体腹腔内にE12.5で投与し、24時間後のE13.5で解剖、前肢および後肢での発現を定量した。Hoxd10およびHoxd13が微増していたものの、ESCO2の有意な発現低下は認められず、四肢の形態にも明白な変化は見られなかった。ESCO2の発現低下についてはNonsense Mediated Decayが起きていない可能性も依然としてあり、断定はできない。一方、ゲノムPCRでは欠失アリルが検出されている。
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