初年度は、ケニアのリフトヴァレー州において5か月間のフィールド調査を行った。ケニアでは、マサイの女性たちの生活世界についての参与観察およびFGMについてのインタビュー調査、そしてFGM廃絶運動を展開するローカルNGOの調査を行った。最終年度は、収集したデータを分析した。分析は、女性の生きる背景、ローカルNGOのFGM廃絶運動、そしてFGMについての語りの3つに分けて行った。 マサイの女性たちの生活については、参与観察、活動調査、聞き取り調査などを通して理解することを目指した。分析の結果、FGMと女性の社会的地位との関係について考察する際には、婚姻や相続、就学歴等に加えて家内労働の実態についても記述する必要があることが明らかになった。 次に、FGM廃絶運動を展開するローカルNGOの調査からは、FGMに対する啓発活動と女子教育の普及、そして代替儀礼の提案など5つのプログラムを組み合わせてFGMの廃絶に取り組んでおり、複合的なFGM廃絶アプローチを取っていることが明らかになった。また、地域住民への聞き取りからは、FGM廃絶運動が様々な反応を引き起こしながらも徐々に地域に浸透していることがわかった。この結果は、日本アフリカ学会第53回学術大会にて報告した。 最後に、FGM経験のインタビュー分析からは、個々人によってFGMの経験やFGMへの態度が異なっていることが明らかになった。FGMに対する女性の意見が一枚岩ではないことは、近年の研究において一般的な見方であるが、その要因の分析が進んでいるとは言えない。今後は、ジェンダー関係についての調査データをもとに、FGM認識を左右する背景について分析する予定である。 これらのフィールド調査に加えて、イギリスの研究施設を訪問し、ヨーロッパの研究者と研究テーマについての意見を交換することができた。今後はこれらの研究結果を博士論文にまとめる予定である。
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