本年度は,3年間の研究期間の最終年度として,これまでに構築した要素技術を統合した試行獲得型マニピュレーションの枠組みを考案し,ロボットが未知遠隔環境で自律的にタスクを行うための最終的な統合システムを構築した.具体的には,ロボットの行動が力の釣り合いや接触拘束などの実世界の物理法則と照合して整合性がとれているかを数値最適化手法によって定量的に評価する物理的整合性推論を基盤として,昨年度までに開発した物体操作計画,物体力学特性推定,物体位置姿勢認識の手法を再定義することで,各種法をロボットによる物理的意味理解という側面から捉え直し汎用性を向上させた.未知遠隔環境での自律行動にあたっては,周囲の環境や物体の特性を事前に知ることのできない点が問題となるが,本研究では,これらの特性の確信度分布をロボットが保持しセンサ情報に基づいて更新することで,状況を確定的に捉えられない場合でも試行錯誤を経て自律的にタスクを実現するシステムが構築された.各要素技術の妥当性をシミュレーション上での二次元マニピュレーション例において検証した後に等身大ヒューマノイド実機を用いた統合実験を行った.この実験により,教示学習,対人協調作業,道具利用などの高度なスキルを伴うマニピュレーションタスクが,未知遠隔環境を想定した特性未知物体を対象とした場合でも提案システムによって実現されることが確認された.以上のことから,物理的整合性推論を基盤とする試行獲得型自律行動によって,ロボットによる未知遠隔環境での行動可能性が拡張されたと結論付けることができる.
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