生体組織に生じるひずみが引き起こす組織の破裂や障害は,QOLの低下や重篤な疾患につながる.生体組織の破裂や障害のリスクを低減するためには,生体組織に生じるひずみを評価し,破裂や障害の発生機序を明らかにし,外的負荷が組織の破裂や障害に与える影響を評価する方法の開発が重要と考えられる.先行研究では,体外で生体モデルに生じる三次元ひずみ分布を計測することで,破裂や障害のリスクを評価する研究がなされている.しかし,従来の三次元ひずみ分布計測法では,時間分解能に限界があり適用可能な対象は限定的であり,三次元ひずみ分布計測法の残された課題である.今年度,本研究では三次元流体計測法である断層粒子画像流速計測法を固体のひずみに適用することで,これまでにはない高い時間分解能を有する三次元ひずみ分布計測法を開発した. さらに,開発した新規ひずみ分布計測法を用いて,大動脈弁狭窄症の治療法である経カテーテル大動脈弁留置術において弁輪部破裂リスクを評価するため大動脈弁モデルに生じるひずみ分布の計測を行った.計測結果から,弁輪部破裂リスクの高い大動脈弁の解剖学的特徴を明らかにするとともに,弁輪部破裂リスク低減のための有用な手術手法を明らかにした.今後,本研究で開発した新規ひずみ分布計測法をひずみ計測の基盤技術として用いることで,これまで困難であった医療機器や疾患における生体組織の破裂や損傷のリスクの定量評価への応用が期待される.
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