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2015 年度 実績報告書

DNAおよびDNA代謝酵素の1分子蛍光観測による動態解析

研究課題

研究課題/領域番号 15J07154
研究機関群馬大学

研究代表者

高橋 俊介  群馬大学, 理工学府, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワード1分子観察 / DNA形態制御 / DNA複製 / 微細流路 / 1本鎖DNA / DNAポリメラーゼ / 超らせん
研究実績の概要

DNAポリメラーゼの機能は試験管内実験の測定法であるゲル電気泳動法により解析されている。この解析法により得られる結果は数百万分子以上の鋳型DNAを合成するDNAポリメラーゼの平均挙動の応答のみの情報であるため、DNAポリメラーゼ1分子の揺らぎの影響の解析は困難である。一方で、1分子研究は個々のDNAポリメラーゼ分子の挙動の応答を捉えることができるため、DNA合成反応の過程のDNAポリメラーゼ同士の入れ替わり・DNAポリメラーゼのDNA合成反応の停止、DNAへ結合・解離するDNAポリメラーゼの動的挙動などのDNAポリメラーゼの機能を明白にすることができる。本研究では1分子レベルにてDNA合成反応をリアルタイム観察することで、DNAポリメラーゼの動態挙動や機能分担を明らかにすることを目的としている。
本年度の研究実績として、DNAポリメラーゼによるDNA合成反応を1分子蛍光観察するために、DNA複製・修復反応に関与する大腸菌やマウス、ヒトなどの哺乳動物のDNAポリメラーゼの準備とそれらの蛍光標識法を開発した。また、DNA合成反応の直接観察には大腸菌及び哺乳動物の1本鎖DNA (ssDNA) 結合タンパク質へ蛍光タンパク質を融合した蛍光1本鎖結合タンパク質を用いた。蛍光1本鎖DNA結合タンパク質により標識したssDNA領域を含む直鎖状DNAを鋳型として用いることで、大腸菌及び哺乳動物DNAポリメラーゼによるDNA合成反応は直接観察した。DNA合成反応の観察の間、DNA合成酵素の進行に伴い鋳型直鎖状DNAのssDNA領域が徐々に短くなった。DNA合成反応の進行により蛍光1本鎖DNA結合タンパク質がDNAのssDNA領域から解離する様子を捉えることができた。その後、合成したDNAの2本鎖領域はインターカレーター型蛍光色素 (SYTOX Orange) により蛍光染色することで可視化した。この結果、本研究では1分子レベルでのDNA合成反応のリアルタイム観察に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでにDNA合成酵素によるDNA合成反応の直接観察や任意の超らせん密度を任意のタイミングで直鎖状DNAへ超らせんを導入可能な実験系の構築に成功した。これらの得られた研究成果は論文や複数の学会にて精力的に発表した。また、学会にて賞など受賞した。
本研究では大腸菌1本鎖DNA結合タンパク質 (SSB) に赤色蛍光タンパク質 (DsRed) を融合した蛍光1本鎖結合タンパク質であるSSB-DsRedと1本鎖DNA結合能を持つ1本鎖DNA結合タンパク質RPA70 kDaサブユニットに黄色蛍光タンパク質 (YFP) を融合した蛍光1本鎖結合タンパク質であるRPA-YFPを作製した。SSB-DsRedやRPA-YFPにより標識したssDNA領域を含む鋳型直鎖状DNAを用いることで、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片やDNAポリメラーゼβによるDNA合成反応を直接観察した。DNA合成反応の観察の間、クレノウ断片やDNAポリメラーゼβの進行に伴い鋳型直鎖状DNAのssDNA領域が徐々に短くなった。この観察により、SSB-DsRedやRPA-YFPが鋳型直鎖状DNAのssDNA領域から解離する様子を観察することができた。その後、インターカレーター型蛍光色素により2本鎖DNAを蛍光染色することで、合成したDNAの2本鎖DNA領域を観察した。これらの結果から、本研究ではクレノウ断片やDNAポリメラーゼβによるDNA合成反応の可視化に成功した。これらのDNA合成反応の解析の結果、クレノウ断片によるDNA合成反応のDNA合成速度は33塩基/秒であった。本研究の結果とゲル電気泳動法による解析結果とほぼ同じDNA合成速度が得られたことから、実験の整合性がとれた。一方、DNAポリメラーゼβによるDNA合成反応の直接観察により得られたDNA合成速度はゲル電気泳動法による解析結果と異なる結果となった。

今後の研究の推進方策

今後も本研究では1分子レベルにて大腸菌および哺乳動物DNAポリメラーゼによるDNA合成反応をリアルタイムにて観察を進めていく。DNA合成反応のリアルタイム観察から得られた結果をもとに、DNAポリメラーゼの動態挙動や機能分担を解析していく予定である。そのため、現段階では大腸菌DNAポリメラーゼⅡ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴや哺乳動物のDNAポリメラーゼλ、δ、α、εやクランプ及びクランプローダーである細胞増殖核抗原 (PCNA)、5量体Replication Factor C (RFC 1、2、3、4、5) などのタンパク質の準備を進めている。
細胞周期的に核マトリクスに固定されている染色体DNAは超らせんをはじめとする高次構造をとっている。一方、水溶液内での閉環状DNAの場合には、熱擾乱による局所的な超らせんが導入されているため、試験管内では閉環状DNAの超らせん状態を制御できない。そのため、超らせん歪みが果たしている生理学的役割は極めて限られた知見しかない。そこで、DNAの超らせんがDNA複製反応にどのような影響を与えるのかを解析するために、微細流路装置、磁気ピンセット装置、蛍光顕微鏡装置の組合せである1分子蛍光観察装置を用いて、直鎖状DNAへの超らせんが導入可能な実験系を構築した。今後、Hurwitz、Stillmanら多くの研究者により確立された複製モデルであるSV40 in vitro 複製系を開発した1分子実験系に適応することで、複製DNAポリメラーゼの機能など、負の超らせんがDNA複製反応に与える影響を解析していく。そのため、SV40複製因子である複製開始とヘリカーゼ活性の機能を持つSV40ラージT抗原、哺乳動物複製DNAポリメラーゼα、δ、ε及びその他の複製関連因子の準備も平行して進めていく。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Direct Single-Molecule Observations of Local Denaturation of a DNA Double Helix under a Negative Supercoil State.2015

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, S., Motooka, S., Usui, T., Kawasaki, S., Miyata, H., Kurita, H., Mizuno, T., Matsuura, S.-I., Mizuno, A., Oshige, M., Katsura, S.
    • 雑誌名

      Analytical Chemistry

      巻: 87 ページ: 3490-3497

    • DOI

      10.1021/acs.analchem.5b00044

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] DNAの負の超らせん導入下におけるSV40ラージT抗原によるDNA解鎖反応の1分子直接観察2015

    • 著者名/発表者名
      高橋俊介、本岡伸也、川崎祥平、栗田弘史、水野武、松浦俊一、水野彰、大重真彦、桂進司
    • 学会等名
      BMB2015 (第38回日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)
    • 発表場所
      神戸国際展示場 (兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] 蛍光複製タンパク質を用いた1本鎖DNA標識によるDNA合成反応の1分子観察2015

    • 著者名/発表者名
      高橋俊介、石川裕一、柳基成、小和瀬聡実、川崎祥平、栗田弘史、水野武、松浦俊一、水野彰、大重真彦、桂進司
    • 学会等名
      BMB2015 (第38回日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)
    • 発表場所
      神戸国際展示場 (兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] DNAおよびDNA代謝酵素の1分子蛍光観察による動態解析2015

    • 著者名/発表者名
      高橋俊介、川崎祥平、栗田弘史、水野武、松浦俊一、水野彰、大重真彦、桂進司
    • 学会等名
      化学工学会群馬大会2015
    • 発表場所
      桐生市民文化会館 (群馬県・桐生市)
    • 年月日
      2015-11-27 – 2015-11-28
  • [学会発表] Direct Single-Molecule Observations of DNA Synthesis and Digestion Reactions.2015

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, S., Kawasaki, S. Kurita, H., Mizuno, T., Matsuura, S-I., Mizuno, A., Oshige, M., Katsura, S.
    • 学会等名
      The 11th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Applications (RASEDA) & the 7th International Conference on Advanced Micro-Device Engineering (AMDE)
    • 発表場所
      kiryu (Japan)
    • 年月日
      2015-11-11 – 2015-11-13
    • 国際学会
  • [学会発表] 負の超らせん状態でのSV40ラージT抗原によるDNA解鎖の1分子観察2015

    • 著者名/発表者名
      高橋俊介、川崎祥平、栗田弘史、水野武、松浦俊一、花岡文雄、水野彰、大重真彦、桂進司
    • 学会等名
      第23回DNA複製・組換え・修復ワークショップ
    • 発表場所
      焼津グランドホテル (静岡県・焼津市)
    • 年月日
      2015-10-19 – 2015-10-21
  • [学会発表] 負の超らせんによる二重らせんDNAの局所的な開裂の1分子観察2015

    • 著者名/発表者名
      高橋俊介、川崎祥平、栗田弘史、水野武、松浦俊一、花岡文雄、水野彰、大重真彦、桂進司
    • 学会等名
      第23回DNA複製・組換え・修復ワークショップ
    • 発表場所
      焼津グランドホテル (静岡県・焼津市)
    • 年月日
      2015-10-19 – 2015-10-21
  • [学会発表] 負の超らせんDNAによる二重らせんの局所的な開裂の1分子観察2015

    • 著者名/発表者名
      高橋俊介、本岡伸也、川崎祥平、栗田弘史、水野武、松浦俊一、水野彰、大重真彦、桂進司
    • 学会等名
      2015年度生物工学若手研究者の集い (若手会) 夏のセミナー
    • 発表場所
      タナベ名古屋研修センター (愛知県・北名古屋市)
    • 年月日
      2015-07-11 – 2015-07-12

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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