研究課題/領域番号 |
15J07204
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
CELIK KENAN THIBAULT 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 記述言語学 / 比較言語学 / コーパス / 電子辞書 |
研究実績の概要 |
宮古語の言語史:現地調査で得られたデータを基に宮古語の諸方言を比較して、「*Cja」という音節の歴史的成立に着眼しながら、宮祖祖語の母音体系について考察を行った。Pellard 2009が示した見解によると、宮古祖語において「*i > fricative vowel」という音韻的な変化が既に完成している(すなわち「*fricative vowel」を再建)ということである。しかし、これと反対に宮古祖語において「*i」を再建した方が「*Cja」という音節の成立をより自然に説明することが可能であることを論じた。
語彙調査と宮古語方言別音声電子辞書の作成:宮古語の言語史を明らかにするために、方言ごとの語彙の発音とその意味を調べる必要がある。下地地域を中心に作成した単語帳を元にして、多良間方言、新城方言、友利方言、鏡原方言、與那覇方言、砂川方言、保良方言の語彙を2500項目ほど調べた(部分的に来間方言と福里方言も)。得られたデータを一部分処理して、データベースに基づいた宮古語方言別音声電子辞書を作成し、公開した(www.kagimyaaku.jp)。現在辞書に掲載されている語彙の個別発音はその数が約一万個にのぼる。残りのデータ(約6000個の語彙の個別発音)を本年度中に処理し、掲載する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語テキストの採集
方言の差を調べる際に、語彙調査はもちろんのこと、良質の言語テキストも不可欠である。前年度(2015-2016)の現地滞在を経て、多良間方言、與那覇方言、来間方言、友利方言、平良方言、上地方言、砂川方言などの言語テキストを採集することができた。特に、継承が既に途絶えている伝統的な民話を7点ほど(友利方言2点、平良方言5点)採集することに成功した。現在、採集されたテキストの中で書き起こしされている物が100点ほどある。これらのテキストは記述の基本となるものなので、大量で良質な言語テキストがあれば、それだけ正確で高度な分析を行うことができるという訳である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、書き起こしされたテキストにグロスを施し、コーパスを作成し、それに基づいて分析を行い、皆合方言を中心に文法記述を行っていく。特に先行研究(Shimoji 2006、Pellard 2009、林2013など)において問題となる音韻論、形容詞の体系、擬態語・擬音語・擬声語の体系などを詳しく取り扱う。また、諸方言のデータを比較し、宮古語の内部的歴史をより深く探っていく。
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備考 |
宮古語を2500項目ほど収録したもので、6つほどの方言の発音が掲載されている。
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