研究課題/領域番号 |
15J07226
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福里 司 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 3Dモデリング / 中割アニメーション / ユーザインターフェース / ストローク |
研究実績の概要 |
申請者は「日本アニメ作品を効率的に制作するため、ユーザ演出を簡単に反映できるシステム」を実現するにあたり,(1)ペンタブレットで描いたイラストからアニメーションを自動生成する研究,(2)イラストから3Dキャラクタを生成する研究に従事した. 一つ目はLineの「動く」スタンプのようなアニメーションを効率的に作成するために,〝ユーザが描いたイラスト間を滑らかにつなぐ中割画像の生成″と〝一度作成した動き情報を別のイラストへ転写する手法″を提案した.事前データを用いることなく,ユーザが描いたイラストから得られる情報のみで生成可能である上,従来手法では扱えなかったストロークに特化したアルゴリズムを提案した. 二つ目に提案した技術は「ペイントアーティスト(専門知識のない人)のための3Dモデリングツール」である.3Dモデルを制作するためには主に(1) ペイントアーティストがキャラクタをデザインし,(2) 3D モデラがイラストを基に作品を作る二つの工程からなる.このような委託作業が行われる主な理由として「ペイントアーティストは3Dモデリング等の専門的な知識がないこと」が挙げられる.アーティストのこだわりをくみ取ることは非常に困難であり,忠実に再現できない問題が生じている.従来手法は(1)球体や円柱への近似する手法,(2)事前データを用意する方法,(3)統計データに基づく手法が挙げられるが,いずれもアーティストの「精巧でかつ任意の形状の3Dモデル」を実現する手法にはなりえない.これらを調査した結果,本目的を達成するための技術やソフトウェアは提案されてこなかったことが分かった.本研究の独創的な点は①直感的な操作方法,②高速なモデリング手法及び,高速なフィードバックを得ることができる点などが挙げられる.本システムを用いることで,全ての被験者が30分程度で,3Dモデルを制作することを実現した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はアニメーション制作を行うアーティスト(素人及びプロ)を対象としたユーザインターフェースを開発した.まず手描きのイラストをペンタブレットから数枚入力して、それらの内挿によってアニメーションを自動生成するツールを完成させた。これは人間の入力した制約のない描写から、自然なアニメーションを生成することが可能であり、特に人物の顔の回転に関しては秀逸な性能を示している。機械学習や事前知識も必要なく、高速にレスポンスするインターフェースの設計と実装を実現した。またAdobe社にて、これまでの研究で得た知識を活かしプロのイラストレータ向けの3次元キャラクタ生成ツールを構築した。この技術は「絵を描くだけだったアーティスト」がアニメーションや3DCG作品を作ることが可能となる拡張技術としての可能性を秘めている.さらに共同研究として「実写画像をペイント画風に置換する手法」「体型の異なるモデルにフィットした衣装モデルの生成」などといったアーティストの3DCG作成を支援するための技術を多数提案した.その成果を国際・国内学会にて発表を活発に行った。これらの技術は今年度も引き続き,Adobe社といった研究機関との研究討論をしつつ研究を続けていく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針として,前年度に着手した技術は,アーティストを対象とした新たな分野の開拓であったことから,さらなる技術開発のためにも共同研究を予定している.今年はこれらの成果を,より多くの研究者やアニメータに向けて周知してもらえるように努める.議論や考察を繰り返し,研究の質を向上させる.さらに,アニメ制作会社の現場スタッフ(申請者の所属する研究室にて,以前に共同研究・技術提供しているアニメ制作会社などによる実使用によって本研究の実用性を検討し,研究成果を結実させる.
|