研究課題/領域番号 |
15J07247
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 慶悟 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | LESデータベース / 標準k-εモデル / PIV / 都市キャニオン / 幾何形状 / 大気安定度 / レイノルズストレス / 乱流熱フラックス |
研究実績の概要 |
本研究は都市気流を対象としたLESデータベースを作成し、それを用いて都市気流における乱流モデルの評価、開発を行うものである。平成28年度は、①LESデータベースを用いた様々な大気安定度・幾何形状の都市街区気流に関する乱流モデルの評価、②空間発達する都市境界層気流に関するPIV測定を行った。 ①LESデータベースを用いた様々な大気安定度・幾何形状の都市街区気流に関する乱流モデルの評価 様々な大気安定度、幾何形状の都市街区気流を対象としたLESデータベースを作成し、大気安定度、幾何形状が、k-εモデルの予測精度、k-εモデルにおけるレイノルズストレス、乱流熱フラックスのモデル化の妥当性に与える影響について検討した。k-εモデルでは、大気安定度が不安定になるほど、平均風速、平均温度の予測精度が低下した。また、k-εモデルでは、幾何形状の変化に伴う気流パターンの変化が十分に再現されなかった。さらに、都市街区気流においては、k-εモデルでは通常無視される乱流熱フラックスの平均風速勾配による生産、浮力生産が大きな影響を持つことを示した。したがって、これらの効果を乱流熱フラックスのモデル化に組み込む必要があることを明らかにした。 ②空間発達する都市境界層気流に関するPIV測定 これまで実験事例が少なく、CFD解析の精度検証用データが不足している、空間発達する都市境界層気流に関するPIV測定を行った。PIV測定結果を用いて、都市境界層の空間発達が都市街区気流に与える影響について検討した。その結果、都市境界層が空間発達するに従って、都市街区に形成される循環渦の中心位置が変化することを示した。また、都市街区に流入した直後は大きな風速変動となるが、都市境界層が空間発達するに従って、風速変動が小さくなることを示した。今後、PIV測定結果はLESデータベースの信頼性検証用データとして用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、様々な大気安定度、幾何形状の都市街区気流を対象としたLESデータベースを作成し、その結果に基づいて、大気安定度、幾何形状が乱流モデルの精度に与える影響について明らかにすることを目標とした。まず、様々な大気安定度、幾何形状の都市街区気流を対象としたLESデータベースを作成した。作成したLESデータベースを用いて、大気安定度、幾何形状が実用計算で用いられるk-εモデルの精度に与える影響について整理し、k-εモデルにおけるレイノルズストレス、乱流熱フラックスのモデル化の問題点を明らかにした。 今後は都市街区気流に大きな影響を与えると考えられる、空間発達する都市境界層気流を対象としたLESデータベースを作成する予定である。そのためには、LESデータベースの信頼性検証用の風洞実験データが必要となる。そこで、空間発達する都市境界層気流に関するPIV測定を行った。熱線風速計の測定結果との比較により、PIV測定結果が十分な信頼性を有することを確認した。さらに、PIV測定結果を用いて、都市境界層の空間発達が都市街区気流における平均風速、乱流統計量の空間分布に与える影響について明らかにした。今後、PIV測定結果はLESデータベースの信頼性検証用データとして用いる予定である。 以上の成果から、平成28年度は当初の目標を十分に達成できており、さらに計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、様々な大気安定度、幾何形状の都市街区気流を対象としたLESデータベースを作成し、その結果に基づいて大気安定度、幾何形状が乱流モデルの精度に与える影響について明らかにした。さらに、これまで実験事例が少なく、CFD解析の精度検証用データが不足している、空間発達する都市境界層気流に関するPIV測定を行った。 今後は、まず、空間発達する都市境界層気流を対象としたLESデータベースを作成し、PIV測定結果との比較により、LESデータベースの信頼性について検討する。さらに、信頼性を確認したLESデータベースを用いて、都市境界層の空間発達がk-εモデルの予測精度、k-εモデルにおけるレイノルズストレスのモデル化の妥当性に与える影響について検討する予定である。 また、これまでLESデータベースを用いて明らかにしてきた都市気流におけるk-εモデルの問題点に基づき、レイノルズストレス、乱流熱フラックスのモデル化の改良を行う。レイノルズストレスのモデル化については移流、拡散のような非局所的な効果、乱流熱フラックスのモデル化については平均風速勾配による生産、浮力生産の効果を組み込み、都市気流において高精度かつ簡易な解析が可能な乱流モデルの提案を行う予定である。
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