研究実績の概要 |
平成27年度は以下の2点について明らかにした。 ・オーキシン応答阻害はDSB感受性を上昇させる オーキシン添加によってDSB誘導試薬感受性が緩和したことから,オーキシンのどの働きがDSB誘導試薬感受性しいてはクロマチン構造制御に関与しているかを明らかにすることにした。オーキシン応答阻害剤をDSB誘導試薬と共に添加した培地でシロイヌナズナ植物体を処理し根の伸長を定量した。オーキシン応答阻害剤であるPEO-IAAをゼオシンとともに添加した培地で処理した場合,根の伸長阻害が促進された。このことからオーキシン応答がクロマチン構造制御に関与していることが示唆された。 ・オーキシン応答はFAS1,2の発現量を調節し,クロマチン構造を制御する。 オーキシン応答阻害によりクロマチン構造が弛緩しDSB誘導試薬感受性が上昇する原因は,オーキシン応答の下流にクロマチン構造を制御するリモデリング因子があるためだと考えた。そこで,クロマチンリモデリング因子遺伝子欠損変異体系統124種類に対してDSBを用いてオーキシン添加によるDSB誘導試薬感受性の変化を指標に,スクリーニングを行い,オーキシン添加をしてもDSB誘導試薬感受性が変化しない変異体fas1を獲得した。FAS1はFAS2と共に複合体を形成し,ヒストンH3,H4をクロマチンに運ぶヒストンシャペロンの一種である。オーキシン添加によりFAS1,2の遺伝子発現が上昇することが確認された。また,FAS1遺伝子欠損変異体ではオーキシン添加によるDSB感受性の低下が観察されず,オーキシン応答阻害剤PEO-IAAを添加しても相加的なDSB誘導試薬感受性の上昇は観察されなかった。以上の結果から,オーキシン応答によってFAS1,FAS2の遺伝子発現上昇し,クロマチン構造が変化することが示唆された。現在,この成果をまとめ論文投稿の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の実験計画に従って、オーキシン応答阻害はDSB感受性を上昇させるとことを証明した。さらに、シロイヌナズナ植物体を用いた実験系で天然オーキシンの添加によりDSB inducer感受性が緩和することを明らかにした。オーキシン応答によってFAS1、FAS2の遺伝子発現上昇し,クロマチン構造が変化することが示唆するデータを取得できたことは、研究の進展があったといえよう。また、表現型解析において、新たな植物深部イメージング手法TOMEIを開発し、Best poster award, をInternational ERATO Higashiyama Live-Holonics Symposium,にて、ベストイメージ・晝馬賞を 第24回日本バイオイメージング学会学術大会にて、最優秀ポスター賞,を東京理科大学総合研究機構イメージングフロンティアセンターシンポジウムにて受賞した。また、新聞記事やネットニュースでも研究成果が報道された。このような研究成果を挙げ、受賞実績を上げたことから、期待以上の進展があったと評価できる。
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