研究課題
申請者はこれまで、節足動物媒介性病原体の環境中における生活環とその生存・拡大戦略を解明するため、野兎病菌の節足動物体内における動態解析に取り組んできた。大規模な疫学調査の結果から、日本国内における野兎病菌はヤマトマダニ(Ixodes ovatus)とシュルツェマダニ(I. persulcatus)の2種類を主として維持されていることが明らかとなった。このうちシュルツェマダニを用いた野兎病菌感染モデルにより、感染後2週間に及ぶ野兎病菌の長期体内生存が確認され、環境ステージである25℃培養条件下の野兎病菌において特異的に発現している因子Environmental Stage Temperature Factors(ESTFs)を欠損した株で増殖率が有意に減少した。このことから、野兎病菌は節足動物体内で生存・増殖するためにESTFsを含む特異的な機構を有している可能性が示唆された。さらに、野兎病菌の節足動物体内における体内動態を解析するために、カイコ(Bombyx mori)を用いた新規感染モデルを確立し解析を行った。その結果、カイコの体内において野兎病菌が生存・増殖し、菌数が1週間以上維持されること、さらに野兎病菌がカイコの免疫系を操作していることが明らかとなった。この研究結果から、野兎病菌はその生活環において節足動物宿主との共生関係を構築していることが示唆された。本課題によって得られた成果により、日本における環境中の野兎病菌保有節足動物を解明するとともに、これまでにまったく不明であった節足動物への適応機構の一端を明らかにすることができた。これらの知見は環境中の野兎病菌の拡大制御に寄与する成果として、申請者を筆頭著者とする2本の論文にまとめ、国際学術誌に発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Letters in Applied Microbiology
巻: 63 ページ: 240-246
10.1111/lam.12616
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 31476
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