研究課題/領域番号 |
15J07423
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小澤 大知 早稲田大学, 先進理工学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ナノカーボン / オプトエレクトロニクス / 原子層 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、原子層材料における新奇光機能の探索であり、具体的には酸化グラフェン中のナノ構造に由来する光学特性の解明を試みる。本研究を通して、原子層材料ベースの発光デバイスの研究への足がかりとしたい。 酸化グラフェンは、酸化度、つまりグラフェンナノディスクのサイズや、酸化グラフェンシートを占める割合により、その電気伝導特性が変化する。過度に酸化を進めると絶縁体になり、逆に還元しすぎればグラフェンのようなゼロギャップの金属的伝導性をもつようになり、発光しなくなることが予想される。そのため、酸化度の最適化、すなわち、効率良く光電変換される酸化度を有する酸化グラフェンを作製することは、一つの課題になり得る。そこで本年度は、まず酸化グラフェンを用いた発光デバイスの作製条件の検討とデバイス評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化グラフェンを基板上に成膜し、ソース、ドレイン、ゲートの3電極を蒸着して電界効果型トランジスタを作製し、電子輸送特性評価を行った。電流励起発光の観測のためには酸化グラフェン中にpn接合を導入する必要がある。つまり酸化グラフェン薄膜デバイスにおいて、p型とn型の両極性の伝導特性を示す必要がある。未還元の酸化グラフェンではp型の電気伝導特性を示したのに対して、加熱による還元処理を繰り返し行うことで、n型に近い電気伝導を示すようになり、やがて両極性駆動をするようになることが分かった。 酸化グラフェンが両極性駆動する条件がわかったため、次にpn電流励起下での発光観測を試みた。電圧3V、電流0.8 mAまで印加して酸化グラフェンに電荷注入を行ったが、電流励起発光は観測されなかった。この原因として還元処理が過剰であり、酸化グラフェンが金属的伝導性をもつようになり、発光しなくなったことが考えられる。また、用いた酸化グラフェンの結晶クオリティが低く、発光効率が低かったことが考えられる。今後の検討課題としては、酸化グラフェンの合成方法の改良及び、酸化グラフェンを伝導性ポリマーに埋め込んだデバイスなど、他のデバイス構造による電流励起発光観測が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進める過程で、類似の研究が2015年のNature Communications (Wang X, et al. A spectrally tunable all-graphene-based flexible field-effect light-emitting device. Nat Commun 6, 7767 (2015).)で発表されたことがわかった。この論文の存在により、本課題の新規性が下がるという見方もある。しかしながら、本課題においてはイオン液体ゲートを用いており、キャリア密度制御能力が高いデバイス構造であるために、原子層の光学的特性により精密にアクセスできる。引き続き原子層材料ベースの発光デバイス研究を進めたい。それと同時に、原子層材料ベースの電界効果型トランジスタを用いた新奇機能性を開拓していく予定である。
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備考 |
(2)は(1)の日本語版ページ。(3)は竹延教授が名古屋大学異動前のページ。
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