研究課題/領域番号 |
15J07444
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野島 隆之 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 脳波 / リズム現象 / 位相振動子 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
生物は生きていくうえで様々なリズム運動を利用している。人間の脳内の神経活動においても振動する活動が存在し、脳波計測などで観測することが可能である。この活動により認知や知覚といった脳の高次機能が実現されていると考えられているもののどのようなメカニズムで実現しているのか不明である。本研究では脳波の同期現象に着目し、脳機能に依存した脳波間ネットワークの同定を試みる。 脳波間ネットワークを推定するために、脳波を振動子と見做し、実験データから振動子ネットワークを推定する。従来の振動子ネットワークの推定手法は同一周波数での結合関数を推定するものであった。これに対して本年度では、異なる周波数間の振動子ネットワークが推定可能なように拡張した。また、この推定手法の妥当性を検証するためにニューラルマスモデルと言う脳波のモデルを用いてテストデータを生成し、正しく推定できることを確認した。その後、実験で得られた脳波データに対して、振動子ネットワークを推定し、脳機能により異なるネットワークの推定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗としてはおおむね期待通りの進展している。”脳波生成モデルを用いた推定手法の検証”と”脳波データへの適用”に関してはおおむね完了しており、申請書に記載した年次計画よりも早いペースで進んでいる。 ”脳波生成モデルを用いた手法の検証”では異なる周波数をもつ脳波間の相互作用を振動子と見做すことで脳波間ネットワークを推定した。従来の推定手法として同一周波数間の結合関数を推定する手法がある。この手法を異なる周波数間の結合関数が推定可能なように拡張した。実験データに適用する前にニューラルマスモデルという脳波生成モデルを用いて脳波データを生成し、これに推定手法を適用することで手法の妥当性を検証した。同一周波数、複数周波数ともに適切な結合関数を推定することに成功した。 ”脳波データへの適用”では実験データに対して推定手法を適用し、脳波間の相互作用を結合関数として同定した。実データに今回の手法を適用するためには、頭皮上の電極ごとに得られる脳波を個々の振動子としての脳波に分離する必要がある。そこで、電極ごとに得られる脳波データに対して独立成分分析を適用し独立な脳波を同定した。この独立な脳波を用いて、デルタ波とシータ波間の結合関数を被験者ごとに推定した。そして、結合関数の大きさを相互作用の大きさと見做し,被験者間で統計学的な検定法を用いて,課題に依存した振動子ネットワークを同定した。 しかしながら論文投稿には手が回っておらず来年度は頑張っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
脳波データを用いて課題に依存した振動子ネットワークを同定した。しかしながら、脳波の空間的解像度の低さから、対象としている脳波活動がどの脳領域の活動なのか不明である。このままでは先行研究との比較が困難であり、同定した振動子ネットワークの妥当性を検証することが難しい。そこで脳波とfMRIの同時計測データに対して結合関数の推定手法を適用し、脳領域間の振動子ネットワークの同定を試みる。 また、同時計測データに対しての結合関数の推定を達成した後、その結果を考慮したうえで経頭蓋磁気刺激法(Transcranial magnetic stimulation: TMS)を用いて、音声聴取成績のコントロールを試みる。脳波データを用いた結合関数の推定結果から、音声を聞いている時と音声を聞いていない時では異なる振動子ネットワークを構成していると考えている。同時計測の解析を行うことで音声聴取中の振動子ネットワークに関わる脳領域を同定し、そこにTMS刺激を与えることで,音声刺激が入る前に音声知覚のネットワークへの切り替えを試みる予定である。
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