研究課題/領域番号 |
15J07468
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
染谷 和江 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 免疫学 / T細胞 / 制御性T細胞 / エピジェネティック修飾の制御 |
研究実績の概要 |
誘導性制御性T細胞(iTreg)は,TGFβ存在下でNaive T細胞より誘導され,in vitroにおいて多量に作成可能である。このことから,iTregは様々な免疫疾患治療への応用が期待されるが,一方で,iTregは胸腺で成熟したnTregに比べ、マスター制御因子であるFoxp3の発現が不安定であるため,その免疫抑制効果は限られている。 TregにおけるFoxp3発現の安定性はTreg-specific demethylation regions (TSDRs),特にFoxp3のエンハンサー領域のCpG motifsの一つである,CNS2が脱メチル化されていることに大きく依存する。そこで我々は,脱メチル化酵素TET (ten-eleven translocation)に注目し,その活性部位(TET-CD)を過剰発現させることでiTregにおけるTSDRsの脱メチル化を試みた。 TET-CD過剰発現iTregでは,部分的なCNS2の脱メチル化が亢進され,in vitroおいてより安定的なFoxp3の発現を示した。また,TET-CD過剰発現iTregは,炎症性腸管疾患モデルにおいてもコントロール群に比べ,より安定的な抑制能を示すことがわかった。 さらに,我々はTET関連タンパク質の発現が低酸素培養で増強され,TET2及びTET3が発現しない状況では,低酸素条件でもCNS2のDNA脱メチル化とFoxp3発現の安定化に至らないことを示した。 また,TETの触媒活性を増強するVitamin Cとの組み合わせでは,低酸素条件で誘導したiTregが最も強い抑制能及びFoxp3発現の安定性を持つことがわかった。 以上のことから,本研究は,iTregにおいてTETの発現を増強することで,iTregが自己免疫疾患やアレルギーや,臓器移植後の免疫寛容などへの治療に応用可能であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度の研究推進方策で予定していた通り,Vitamin.Cを用いたTETの触媒活性の増強や,新たに細胞内在性のTETタンパク質の誘導方法として,低酸素培養法の導入によって,より簡便なiTregの安定化を実現し,Foxp3発現の安定化や病態モデルにおける効果など,現段階において本研究の目的に見合う結果が得られた。 さらに,本研究をより充実させる内容として,Treg特異的TET2及びTET3欠損マウスを用いた実験により,TETによるFoxp3-CNS2領域の脱メチル化がiTregの安定化に貢献する直接的な結果が得られた。 以上のことから,本研究は現段階において,当初の計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,主にマウスモデルを用いた研究内容であったが,今後は当初の計画に加え,最終的なiTregの安定的な治療応用を目標に,ヒトの細胞を用いた研究実験を計画している。 具体的には,これまでのマウスモデルでの実験で確立した培養方法,すなわち,Vitamin.C添加や低酸素培養を組み合わせて,より機能の安定化したヒトiTregの作成を試みる。さらに,作成したiTregにおけるFoxp3CNS2領域の脱メチル化が亢進しているのかも確認する。
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