研究課題
最大正則性とは偏微分方程式に対する性質の一つであり,非線形放物型方程式やNavier-Stokes方程式を中心とした非線形偏微分方程式に対する解析において広く用いられている.本研究の目標は,最大正則性の時空間に関する離散化を考え,上述の偏微分方程式に対する数値解析,特に有限要素法や有限体積法に対して応用することである.本年度は以下の成果を得た:(1) Neumann境界条件における楕円型作用素に対する(空間に関する)離散最大正則性(2) hydrostatic Stokes方程式に対する有限要素法の誤差解析まずは,(1)について説明する.放物型方程式を有限要素法で離散化した問題に対する離散最大正則性の研究において,Neumann境界条件を考えている場合は,技術的な理由により,2次元の凸領域においてしか適用することができない結果になっていた.そこで,本年度は,任意の次元におけるNeumann問題を取り扱うために,境界が滑らかで,一般に非凸な領域における放物型方程式のNeumann境界値問題に対する有限要素法を考察した.その結果,離散的な半群の最大値ノルムによる有界性と解析性,最大値ノルムによる誤差評価,そして,ルベーグ空間における離散最大正則性を導くことができた.この成果により,「日本数学会応用数学研究奨励賞」を受賞した.次に,(2)に関して説明する.この方程式は,地球表面の海水や大気の運動を記述するprimitive方程式と呼ばれる方程式の線形化問題であり,Navier-Stokes方程式に対するStokes方程式に対応する方程式である.通常のStokes方程式よりも良い性質を持つために,Stokes方程式と比べて離散最大正則性を導きやすいと期待できる.そこで,そのための準備として,有限要素法の定式化と,エネルギーノルムによる誤差評価を導いた.
2: おおむね順調に進展している
放物型方程式のNeumann境界値問題に関して, ほとんどベストな結果を得ることができたため.
放物型方程式に対して得られた結果を, 非線形問題へ応用することを考察する.また, 放物型問題であっても, 作用素が正定値でない場合についても考察し, 反応拡散方程式などの非線形問題へ応用する.hydrostatic Stokes方程式など, 流体方程式に対する基礎研究と応用も引き続き考察する.
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Studia Mathematica
巻: 234 ページ: 241--263
10.4064/sm8495-7-2016