研究課題/領域番号 |
15J07486
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
李 伶 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | テルペノイド / カロテノイド / スクアレン / ボトリオコッセン / 進化工学 / 生合成 |
研究実績の概要 |
トリテルペノイドはC30の分子骨格を持つイソプレノイドの総称であり,カロテノイド,ステロイド,という巨大な代謝物類のファミリーに加え,最近では,微細藻類などが合成するボトリオコッセンが加わり,その多様性の創出メカニズムに注目が集まっている。それぞれの生合成酵素の活性をスクリーニングする方法を開発し,それを用いて,それぞれの酵素の反応特異性を改良することが,本研究の最初の目的である。申請者は,ステロイド類の前駆体スクアレンを可視化する手法を開発した。本研究では,このスクリーニング法を用いて,様々なテルペノイド合成酵素の機能を改良することを目指した。 昨年度は,ボトリオコッセン合成酵素SSL1/3のうち,後段(PSPP → BO)を担うSSL3の生産物活性をSq活性の特異改変させ,さらにSSL3の細胞内活性を優位に向上させる変異を発見した。これに加え本年度は,SSL1/3の基質サイズ特異性を担うアミノ酸部位を特定し,C35やC40非天然ボトリオコッセンの生合成を世界で初めて成功させることができた。さらに,反応ポケットに30個のアミノ酸置換を導入し,進化の過程でSSL3が失った前段の反応(2FPP→PSPP)を回復する変異体を得ることに成功した。 本研究のもう一つの目標は,スクアレンを消費し,環状あるいは非環状の種々のトリテルペン類の生合成活性をスクリーニング取得することである。昨年度,スクアレン・ホペサイクラーゼ(SHC)を非天然Sqに追加発現させ、様々な非天然トリテルペン様化合物の生成を確認したが、SHCの大腸菌内における活性が低いため,原料であるSQのほとんどは未反応のまま細胞に蓄積した。そこで本年度は,野生型SHCのランダムライブラリを作成し,スクアレン消費スクリーニング系を用いてライブラリをスクリーニングすると、鋳型となる酵素より30℃・37℃における活性が向上した変異体を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スクアレン合成酵素やボトリオコッセン酵素の機能改良を続いて行い、非天然ボトリオを生産する変異体を取得できた。また、CrtNを用いたスクアレン消費スクリーニング系を用いて評価を行なったところ、スクアレン環化酵素(SHC)の既報の低温適応変異体(37℃における活性が野生型より高いもの)および野生型を細胞内に発現させた場合、スクアレンの蓄積量とコロニー色の関係が一致していた。そこで、SHCにランダム変異を導入した変異ライブラリを作製し、スクアレン消費スクリーニング系を用いてライブラリをスクリーニングすると、鋳型となる酵素より30℃・37℃における活性が向上した変異体を取得した。変異体の遺伝型解析からは、アミノ酸変異が酵素の基質ポケット内に位置していること、スクアレンの環化メカニズムに大きく影響する残基として報告してあるアミノ酸であることがわかった。まとめると、上流酵素SQSや近縁酵素のボトリオコッセン酵素の改良、またスクアレン消費スクリーニングを用いてスクアレン修飾酵素であるSHCの進化工学から改良型酵素変異体を取得できたので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に引き続き、FPP から直接BOを作るSSL3変異体の活性向上によって,トリテルペン酵素の機能の可塑性を実証する。非天然ボトリオコッセン・スクアレン・カロテノイド経路をさらに拡張・強化するとともに,これら3者の相互変換の十分条件を探索する。 SHC酵素の活性向上をさらに目指していき、スクリーニング系のthroughputをあげ、さらに数多くのスクアレン消費酵素の活性進化を組織的に行うとともに,こうして拡張したスクアレン様化合物を原料とした,さらに多様な新規化合物の生合成経路を確立してゆく。
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