研究課題
本研究は鳥類にみられる無条件兄弟殺しの適応的意義を解明することを目的とし、1雛と2雛を育てた場合のカツオドリ親鳥の繁殖期の採餌行動および親鳥と雛のボディーコンディションを比較する。そして、繁殖期の投資量の変化が、それに引き続く親鳥の非繁殖期の行動や翌年の繁殖行動に及ぼす影響を明らかにする。2015年4~10月にかけて西表島にある東海大学沖縄地域研究センターに滞在し、海況の良い日に西表島の南西15 kmに位置する無人島・仲ノ神島に渡島した。島内を踏査し、孵化直後のカツオドリの雛2羽がいる巣を見つけ、巣の周囲を草や石で高く囲うことで雛間での巣外への追い出しを防ぐことを試みた。雛間の巣外への追い出し行動はまだ歩行能力の乏しい孵化後数日以内のみに見られ、この時期に追い出されなかった場合、2雛とも独立まで巣で親鳥の給餌を受ける。2雛巣を囲った数日後に再び島に上陸して状況を確認したが、どの巣でも2雛は残っていなかった。また、いくつかの巣では両雛および巣自体がなくなっていた。本年度はカツオドリを含む仲ノ神島で営巣・繁殖する海鳥類の繁殖状況が全体的に悪く、また南西諸島への度重なる台風の接近・通過による雛の衰弱や巣の放棄が一因であると考えられる。そのため、本年度はカツオドリの2雛実験巣を準備することができず、親鳥へのデータロガー装着およびボディーコンディションを調べることができなかった。一方、以前に本島のカツオドリ親鳥に装着したジオロケータというデータロガーを数羽から回収することに成功した。それらのデータを解析することで、本研究課題の一部である非繁殖期の親鳥の行動を明らかにすることができると期待される。
3: やや遅れている
本年度は調査地である仲ノ神島における海鳥類の繁殖状況の悪さ、そして頻繁な台風接近・通過により、予定していた通りに研究が進まなかった。しかし、親鳥の非繁殖期の行動データをいくつか得ることができ、また以前に記録されたカツオドリ2雛の成長速度データを解析することにより、研究課題の一部を達成することができると考える。また、本年度の調査結果を踏まえ、より確実にデータを取得できる研究計画(風切り羽を一部切除することによるエネルギーコストの増加)を考えており、来年度には予定通りに研究が進展することが予想される。予定通りのデータを得ることができなかった一方、本年度のように特に繁殖状況の悪い年のデータを得ることで、繁殖投資量の変化に対するカツオドリの行動的応答をより明確に示すことができると期待される。
来年度も巣の周囲を草や石で囲うことにより、2雛巣を作り出すことを試みる。一方、今年度の調査結果を踏まえ、来年度には親鳥の羽の一部を切除する等によって飛翔のエネルギーコストを増加させることにより繁殖投資量を増やし、仮想2雛として親鳥の行動・生理状態の変化を調べることを計画している。これにより、例え2雛巣を準備できなかった場合にも、本研究課題の仮説(繁殖コストの増加は非繁殖期および翌年の繁殖に影響する)を検証することができる。加えて、ビデオカメラを繁殖地に設置し、カツオドリ雛間の巣外追い出し行動を記録し、その実態を明らかにする。
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