研究課題
特別研究員はアゾベンゼンにトリメチルアンモニウム基を含むカチオン性界面活性剤の3-[4-(フェニルアゾ)フェノキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブロミド(AzoTMAB)を合成した。UV-visスペクトルでAzoTMABのキャラクタリゼーションを行った。0.1 M食塩水中でのtrans体に由来するAzoTMABの極大吸収波長は345 nmで、モル吸光係数は23100 L・mol-1・cm-1だった。また0.1 M食塩水中で350 nmのUV光(2.0 mW/cm)を照射すると345 nmのtrans体の吸収が減少し、430 nmのcis体の吸収が増加した。このことからAzoTMABはUV光照射でtrans-cis異性化した。Trans体からcis体への異性化速度は0.0275 s-1だった。また暗所60 °Cで一晩撹拌するとUV光照射前と同じスペクトルが得られた。よってAzoTMABはtrans体とcis体間で可逆的に異性化することを確認した。a-シクロデキストリン(CD)を側鎖結合したポリマーとAzoTMABの包接挙動を調べる前に低分子のCDとAzoTMABが包接可能か1H NMRスペクトルで確認した。0.1 M NaClを含む重水中でAzoTMABとCDを溶解し、化学量論的に当量となるように混合した溶液を暗所60 °Cで加熱撹拌するとNMRのAzoTMABのフェニル基由来のピークeが低磁場シフトしたのでAzoTMABとCDの包接を確認できた。また混合比に対するNMRのピークeのシフト量からジョブプロットを行うことで1:1で包接錯体を形成したことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
特別研究員は、当該研究の根幹となるアゾベンゼンを有する4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤のAzoTMABを新規に合成し、これらの特性評価を行った。NMR測定からAzoTMABが合成できたことを確認した。また、trans体のAzoTMABは345 nmに極大吸収を持つこと確認した。trans体のAzoTMABに350 nmのUV光を照射するとcis体に異性化することを吸収とNMRスペクトルで確認した。側鎖にa-シクロデキストリンを有するポリマーとAzoTMABの包接を確認する前に低分子のa-シクロデキストリンとtrans体のAzoTMABが包接できることをNMRスペクトルで確認した。この包接錯体はa-シクロデキストリンとtrans体のAzoTMABが1対1で形成することをNMRスペクトルのアゾベンゼン由来のピークのシフト量から得られたジョブプロットから確認した。これらの結果から当該研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると言える。
今後は側鎖にa-シクロデキストリンを有するポリマーを合成する。生体適合性ポリマーのポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)をマクロ連鎖移動剤として用いて側鎖をスクシンイミド化したブロックを合成する。また6位の水酸基にアミノ基を付加したa-シクロデキストリンを合成する。スクシンイミド基を有するジブロック共重合体とアミノ基を導入したa-シクロデキストリンを反応させることで、PMPCブロックとa-シクロデキストリンを側鎖結合したブロックからなる両親水性ジブロック共重合体を合成する。このポリマー側鎖のa-シクロデキストリンとAzoTMABを包接して擬似カチオン性ジブロック共重合体を合成する。合成したポリマーをNMRとGPC測定で特性評価する。さらに、水中でアニオン性ジブロック共重合体と混合することで形成するベシクルを光散乱測定、TEM観察で確認する。作製したベシクルに350 nmのUV光を照射して会合体の形状に与える影響を調査する。このベシクルに親水性ゲスト分子を取り込む事を蛍光分光計で確認し、UV光の照射でゲスト分子が放出することを確認する。
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