研究実績の概要 |
今年度、LRRK1欠損によるサイトカイン産生能の評価を目標の一つとしていたが、正常型とLRRK1欠損Bone Marrow Derived Macrophage (BMDM)を用いた解析およびsiRNAを用いたLRRK1ノックダウン細胞の解析によって、LRRK1欠損によりTLR4の刺激やE.Coliに対するTNF-α, IL-6, IL-1βといったサイトカインの産生が亢進することが明らかとなった。またin vivoにおいては、LRRK1欠損マウスは、敗血症モデルであるLPS腹腔内投与実験、関節リウマチのモデルであるコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)に対して感受性を示すことが明らかになった。これらからLRRK1の炎症性疾患との関連が示唆された。 さらに、LRRK1のノックアウトマウスの新生仔が生後1日から離乳期までに死亡する確率が高いことから、そのメカニズムとしてオートファジーの関与を想定して解析を行った。yeast two-hybrid screening、共焦点顕微鏡、免疫沈降などの手法によってLRRK1がオートファジーを制御する分子的メカニズムを明らかにし、その成果をMol.Cell. Biol. 35, 3044-3058 (2015) に発表した。オートファジーはパーキンソン病、心不全、腎症、炎症性疾患など種々の疾患の発症制御に関わることが知られており、LRRK1がパーキンソン病の原因遺伝子として重要なLRRK2とオートファジーの過程において協調的にRab7の活性化・不活性化のサイクルを制御するという今回の発見はパーキンソン病の病態理解において極めて重要な発見と考えられる。
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