研究実績の概要 |
本年度は、昨年度単結晶育成に成功した、カゴ状構造をもつ新規化合物SmPt2Cd20、およびSmIr2Si2の低温物性研究を中心に進めた。また、LaTr2Al20において超伝導を発見し、SmOs4Sb12やSmTr2Al20の放射光メスバウアー分光、超音波、NQR/NMR実験の共同研究用試料提供なども行った。 1.昨年度単結晶育成に成功したSmPt2Cd20において、比熱と温度の比C/Tは低温低磁場領域においてC/Tが異常に増大していることを見出した。この系の電気抵抗率ρは2K以下で温度Tの0.74乗に比例する温度依存性を示しており、これらの低温での物性異常はSmPt2Cd20が強磁性臨界点近傍に位置する化合物である可能性を見出した。 2.近年当研究室で単結晶育成に成功したSmPt2Si2では、異常な反強磁性相では電子比熱係数γが350mJ/molK^2に達する重い電子状態形成されている可能性がある[K. Fushiya et al., JPSJ 83, 113708 (2014).]。本年度は遷移金属元素をPtからIrに置換した、SmIr2Si2の単結晶を育成し、単結晶試料を用いた磁化率、dHvA測定に初めて成功した。 3.LaTr2Al20 (Tr = Ti, Nb, Ta)において超伝導転移を発見し、電気抵抗率、磁化率、比熱を測定して磁場温度相図を決定した。 4.磁場に鈍感な重い電子系典型物質SmOs4Sb12, SmTr2Al20について、Smイオン価数が時間的に揺らいでいることを検証するため、放射光施設SPring-8において近年開発された放射光メスバウアー分光実験を行う目的で我々が育成した試料を提供した。また、SmTa2Al20の秩序相の秩序変数を調べるため、NMR/NQR、超音波測定用の単結晶試料を提供した。
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