研究課題
本年度は、昨年度までに得た研究結果を発表するとともに、必要な実験を行い、論文にまとめた。また、Sm系の重い電子状態について、電子比熱係数とSmイオン平均価数の間に相関を見出し、学会発表を行なった。以下に本年度の研究成果をまとめる。1. 昨年度、単結晶育成に成功したSmPt2Cd20において、T=0.64 Kに強磁性転移を発見し、比熱と温度の比C/Tは強磁性転移温度以下でも、異常に増大していることを見出した。この系のC/Tの磁場依存性を詳細に測定した。低温低磁場領域での物性異常はSmPt2Cd20が強磁性臨界点近傍に位置する化合物である可能性を示している。2.LaTr2Al20 (Tr = Ti, V, Nb, Ta)において超伝導転移を発見し、電気抵抗率、交流磁化率、比熱から磁場温度相図を決定した。今回発見した4つの超伝導体を含むグループは、単結晶構造解析によって決めた原子位置から推定した希土類サイトの“guest free space”がほとんどないが、超伝導転移温度は0.15Kから1.05Kまで広く分布する。これは希土類サイトの非調和原子振動以外の要因、(1)Al原子の16cサイトの巨大な原子振動や(2)遷移金属元素dバンドの特性が超伝導転移温度に寄与していることを示唆している。3.最近、Sm系の重い電子状態を説明する一つの理論として、2軌道不純物アンダーソンモデルを応用した理論が提案された。この理論では重い電子状態は、以下の特徴をもつ。(ア)電子比熱係数の増大、(イ)ウィルソン比の縮小、(ウ)f電子の占有数の変化(中間価数)。この理論とSm系重い電子状態を比較するため、Sm化合物の電子比熱係数とX線吸収分光実験で決定したSmイオン平均価数の関係を整理し、電子比熱係数が最も大きくなるのは、Smイオン平均価数が3価に近い中間価数領域に集中していることを見出した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 87 ページ: 033707-1-5
https://journals.jps.jp/doi/10.7566/JPSJ.87.033707
Physical Review B
巻: 96 ページ: 085102-1-5
10.1103/PhysRevB.96.085102
巻: 86 ページ: 123701-1-4
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.123701
Hyperfine Interactions
巻: 238 ページ: 100-1-8
https://doi.org/10.1007/s10751-017-1473-z
http://denshi-server.phys.se.tmu.ac.jp