研究課題/領域番号 |
15J07603
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浦出 芳郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 自己補対 / テラヘルツ |
研究実績の概要 |
平成27年度は「1.自己補対メタマテリアルを利用した電磁場強度の可視化」、「2.チェッカーボード型メタマテリアルによるテラヘルツ波スイッチング素子の開発」の二つの課題について並行して研究を進めた。
1. まず、これまでは理論および数値シミュレーションによる解析に留まっていた自己補対チェッカーボード構造を持つメタマテリアルの電磁応答の実験検証を行った。フォトリソグラフィーなどの微細加工技術を用いて実際に試料を作製し、テラヘルツ時間領域分光法による透過特性の評価を行った。予想されたように周波数依存性の小さい透過スペクトルが観測され、以前の解析結果とよく一致する結果を得た。また、メタマテリアルの両側から同位相で電磁波を入射すると広帯域で完全吸収現象が起きることを理論・数値シミュレーションで示すとともに、実験検証をテラヘルツ帯で行った。加えて、最終目標であるメタマテリアルにおける吸収を用いた電磁場強度の可視化に向けて、有限要素法による電磁応答と伝熱の連成解析を行った。これにより、目的に適した構造や基板材料が明確になった。
2. 反応性スパッタリングにより成膜した二酸化バナジウム薄膜をエッチングすることで30マイクロメートル程度の島状構造を作製し、その上に金属チェッカーボード構造を形成することでメタマテリアル試料を作製した。摂氏70度程度において二酸化バナジウムが金属-絶縁体相転移特性を示すために、メタマテリアルの温度を上昇させることでその電磁応答が共鳴反射型から共鳴透過型へと大きく変化することをテラヘルツ時間領域分光法により明らかにした。この特性変化は再構成可能である、すなわちメタマテリアルを冷却することで元の特性に戻ることも確認された。このメタマテリアルデバイスはテラヘルツ波に対する動的に切り替え可能なフィルタとして応用することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、自己補対メタマテリアルを作製し、その透過特性を評価することができた。また、有限要素法に基づくシミュレーションにより、メタマテリアルに電磁波を照射したときの吸収とそれに伴う伝熱の解析を行うことで、目的に適した構造・材料の選択が可能になった。一方、二酸化バナジウムとメタマテリアルを組み合わせたテラヘルツ波制御デバイスについても、実際に試料を作製し、温度変化による特性変化を評価するところまで達成できた。したがって、研究はおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、自己補対メタマテリアルを用いた電磁場強度分布の可視化に向けて、前年度で行った電磁応答・伝熱のシミュレーションの結果に基づいてメタマテリアル試料を作製し、実際に電磁波を照射した時の温度分布をサーモグラフィにより観測することを目指す。また、並行して、二酸化バナジウムを用いたメタマテリアルデバイスについても研究を推進する。現在のデバイスは特性の切り替えに温度変化が必要であるが、切り替えに時間がかかるという欠点があるため、代わりに電圧印加による切り替えを目標とする。加えて、異方的な金属構造を用いることで、偏光制御も可能であることを示す。
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