研究課題/領域番号 |
15J07621
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 愛弓 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ニホンミツバチ / 生態系サービス / 送粉 / 授粉 / 生態 / ランドスケープ / 植生 / コロニー |
研究実績の概要 |
本研究では、複数の生態系サービス(野生植物への送粉サービス・作物への授粉サービス、蜂蜜の供給サービス)に寄与していると考えられる在来種のニホンミツバチを対象として、複数の地域・ランドスケープにおいて、コロニーレベルでの花資源の利用や各季節のコロニーサイズを把握することで、各景観における生態系サービスのポテンシャルを把握するとともに、そのポテンシャル評価の基礎となる生態情報を得ることを目的としている。 異なるランドスケープ要素のモザイクから成り、ニホンミツバチの分布の北限域に近い岩手県一関市の里山地域において、ニホンミツバチの季節ごとの各景観、各植物種への送粉・授粉可能性を把握するために、5月~9月にかけて計4つのコロニーが持ち帰った花粉荷を分析した。その結果、ニホンミツバチは、季節を通じて、林床部の草本から、低木層、高木層まで多種の植物を採餌しており、それらの送粉・授粉に寄与していると考えられた。また、ニホンミツバチは、春-夏にかけて、花資源の大部分を、落葉広葉樹林の樹木類(トチノキ、ヤマウルシ、ウワミズザクラ、ウメモドキなど)に依存し、秋季のみ、草本の利用頻度が高まることが示された。 また、ニホンミツバチの分布の南限域であり、本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つ個体の存在が確認されている奄美大島では、ニホンミツバチの生態系サービスの評価に必要な、基礎的な生態情報の収集を行うとともに、複数の季節に、森林、果樹園、畑地など複数のランドスケープにおいて、花資源利用やコロニーサイズの把握、コロニーのフェノロジーの調査等を行い、既に取得しているデータに追加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岩手県一関市の里山では、ニホンミツバチの花粉荷の利用の季節性について分析を行い、送粉に寄与している可能性のある植物種・ランドスケープの季節的変動を明らかにすることができたため。また、奄美大島の複数のランドスケープにおける研究では、複数のコロニーを調査用に確保し、生態系サービスの評価の基礎的情報となる、野生コロニーの生態についてより詳細に把握できたとともに、生態系サービスのポテンシャルの評価に向けた花資源利用のデータも、既存のデータに追加して複数の季節で得ることができた。また、これらの調査に付随して、ニホンミツバチの行動、生活史、フェノロジーなどに関して新たな知見を数多く見いだし、それらの成果を投稿論文として発表するとともに、国際学会でも発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで採集してきたニホンミツバチの花資源利用、コロニーのフェノロジー、生態等に関するデータをとりまとめた成果を、学会発表や論文として公表していく予定である。
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