本年度は、動画処理により得られたトラッキングデータから、特徴的な行動モチーフを検出する手法の開発について研究を行った。行動モチーフ検出手法としては、唯一の先行研究であるBrown et al. (PNAS 2013の手法) が存在するが、本手法は線虫を対象として開発されたものであるため、直接メダカに適用する事は難しいと考えられた。そこで本研究では、先行研究の手法をメダカに応用する上で問題になる部分を洗い出すために、手法の再実装及び先行研究データでの再検証を行った。結果として、先行研究の手法はデータへの依存性が極めて高く汎用性が低い事から、線虫以外の他生物への応用は難しい事が判明した。現在は、時系列データマイニングアルゴリズムを利用した、汎用性の高い新規の行動モチーフアルゴリズムを構築中である。
また、線虫行動データの再解析を行い、線虫変異体が異常な姿勢変化行動を示す理由について研究を行った。具体的には、変異体が異常な姿勢変化行動を示す理由を、「線虫が新しい姿勢を取れるようになる」「行動速度が変化する」「休眠状態の比率が変化する」「新しい姿勢変化行動が生まれる」の4つの可能性に分類し、各変異体がどのケースに分類されるかの解析を行った。結果として、多くの線虫変異体での異常行動の原因は、第一のケースである「線虫が新しい姿勢を取れるようになる」事である事が明らかとなった。一方で、npr-1を始めいくつかの変異体では、取りうる姿勢が野生型と変化していないにも関わらず、異常な姿勢変化行動を示していた。その原因を解析したところ、「行動速度が変化する」「休止状態の比率が変化する」といったケースに該当する変異体は存在したものの、「新しい姿勢変化行動が生まれる」というケースに該当する変異体は存在しない事が明らかとなった。現在はこの研究成果について英語投稿論文を準備中である。
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