【研究の目的】研究の目的は,高齢世代が経験を活かして次の世代を助け,助けられた次世代がその経験を基にさらに次の世代を助けるという,世代を越えて巡る利他性の仕組みと,その中で達成される心理的発達を解明することである。当該年度における研究では,次世代を助けようとする利他性(世代性)や,自己制御の際の行動方略(制御焦点傾向)が,中年期の親子において類似しているかを検証した。 【研究の実施】高齢期の親と中年期の子どもを対象とした調査を行った結果,親と子どもの,次世代に対する利他性が類似していることが分かり,次世代に対する利他性が世代を越えて継承されている可能性が示された。また,次世代への援助行動等の動機となる,自己制御の行動方略についても親子ペアデータを分析した結果,リスクを避ける行動方略の側面において,親子で類似していることが明らかとなった。また,報酬に接近する傾向については,親子で類似していないことが明らかとなった。これらの結果から,次世代に対する利他性やリスク回避傾向は生涯発達の中で親子で類似し,世代間で継承される可能性が示された。この成果について国内外の学会で発表を行い,また学術雑誌にも投稿を行っている。
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