【研究の目的】研究の目的は,高齢世代が経験を活かして次の世代を助け,助けられた次世代がその経験を基にさらに次の世代を助けるという,世代を越えて巡る利他性の仕組みと,その中で達成される心理的発達を解明することである。当該年度における研究では,次世代を助けようとする利他性(世代性)や,自己制御の際の行動方略(制御焦点傾向)が,中年期の親子といった異世代間あるいは夫婦といった同世代間において類似しているかを検証することで,どのような側面が異世代・同世代間で伝達されるのかを明らかにすることを目指した。 【研究の実施】平成29年度は,高齢期の親と中年期の子ども,さらには親・子・子の配偶者を対象とした調査を行い,ダイアド・トライアドデータの分析を行った。その結果,親子では夫婦の影響を,夫婦では親の影響を統制しても,リスクを避ける行動方略の側面においては親子で,利得を追求する行動方略の側面においては夫婦で類似することが明らかとなった。これらの結果から,リスク回避傾向は生涯発達の中で親子で類似し,世代間で継承される可能性,利得獲得の傾向は配偶者選択に影響する可能性が示された。この成果について国内外の学会で発表を行い,また学術雑誌にも投稿を行っている。
|