研究課題/領域番号 |
15J07651
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
久世 祥己 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | プログラニュリン / 網膜発生 / アストロサイト / 網膜神経節細胞 |
研究実績の概要 |
我々の過去の報告において、成体プログラニュリン欠損マウスにおける網膜視細胞および網膜神経節細胞の減少を認め、プログラニュリンを網膜初代培養細胞に添加した場合に視細胞分化が促進されたことから、網膜発生への関与が考えられた (Kuse et al. Sci Rep. 2016)。本研究では、網膜発生期からのプログラニュリンの影響を明らかにすることを目的として、プログラニュリン欠損マウスを用いて検討した。網膜発生期におけるプログラニュリンの作用を明らかにすることは、網膜再生における作用にもつながると考えられる。 プログラニュリン欠損マウスにおいて、glial fibrillary acidic protein (GFAP) の発現増加が認められ、網膜アストロサイトの活性化が起きていた一方で、ionized calcium binding adaptor molecule 1 (Iba-1) 陽性ミクログリアには変化が認められなかった。プログラニュリン欠損マウス視神経においても、同様に、ミクログリアに変化は認められないものの、アストロサイトの活性化が起きていた。また、視神経は主に網膜神経節細胞の軸索から構成されるが、その凝集が認められた。これは、網膜神経節細胞の変性に起因するものと考えられた。 上記の変化がどの時期から認められるのかを検討するために網膜発生早期と後期と考えられる生後1日と9日のマウス網膜を評価した。生後1日のプログラニュリン欠損マウス網膜においてアストロサイトの変化は認められなかったものの、生後9日のプログラニュリン欠損マウスでは、アストロサイトの活性化と、網膜神経節細胞の減少が認められた。また、この段階において、プログラニュリン欠損マウスでは視細胞前駆細胞マーカーの増加と成熟視細胞マーカーの減少を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、プログラニュリンは網膜発生期における網膜神経節細胞の生存とアストロサイトの過剰な活性化において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。特に、生後9日の段階において、プログラニュリン欠損マウスでは網膜神経節細胞の減少、視細胞マーカーの減少、アストロサイトの活性化などを認めたことや、野生型網膜においてプログラニュリンの発現量が生後9日において増加していたことから、その役割を強く発揮しているのは網膜発生後期であると推察された。網膜発生期におけるプログラニュリンの作用を明らかにすることは、網膜再生における作用にもつながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の検討により、プログラニュリンが網膜障害後の網膜再生に寄与するだけでなく、網膜発生にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。特に、以前の我々の報告で見出していたプログラニュリンの網膜視細胞分化促進作用について、生後9日目のプログラニュリン欠損マウス網膜において視細胞の分化阻害が認められたことから、プログラニュリンの視細胞分化への寄与をより明確なものとした。そのほか、網膜神経節細胞にも影響を与える可能性があることから、プログラニュリンは視細胞だけでなく、種々の網膜細胞に影響している可能性が高いと考えられる。今後は、視細胞だけでなく、他の網膜細胞へのプログラニュリンの関与の可能性も考慮に入れ、より詳細に、網膜再生、網膜発生期における関与を明らかにしていく。
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