研究実績の概要 |
網膜発生と網膜再生はその過程が一部類似している。そのため、網膜発生から得た知見を網膜再生へ繋げていくことができると考えられる。我々は前年度からの検討により、プログラニュリン欠損マウス発生期 (生後9日目) 網膜では、網膜神経節細胞の減少、アストロサイトの活性化、視細胞分化の異常などの網膜発生期の異常を認めることを明らかにした。さらに、過去の報告において、プログラニュリンはhepatocyte growth factor (HGF) 受容体を介して、視細胞保護、視細胞分化の促進に働くことを明らかにしている (Tsuruma et al. Stem Cells Transl Med. 2014, Kuse et al. Sci Rep. 2016)。そこで、プログラニュリン欠損マウス網膜において視細胞分化異常が起きている生後9日目の時点で、HGF受容体の寄与を確かめるために、その活性化を野生型マウス網膜と比較検討した。生後9日目のプログラニュリン欠損マウス網膜において、HGF受容体の活性化の低下が認められた。そのため、in vivoにおいてもHGF受容体の減少と視細胞分化の異常が関連していることが示唆された。また、過去の報告において、HGF受容体は網膜神経節細胞の生存に関与することが報告されている (Tonges et al. J. Neurochem. 2011)。一方で、プログラニュリンは直接的にアストロサイトの活性化を抑制することが示されている (Menzel et al. Glia 2017)。以上のことから、プログラニュリンはHGF受容体を介した作用と、それ以外の多様な作用を示し、網膜発生に関与していることが示唆された。
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