研究課題/領域番号 |
15J07665
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 輝 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 電解析出 / 白金 / 薄膜形成 / 高過電圧 / 絶縁性基板 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、固体表面近傍における液体の局所構造を制御することによる電気化学的な材料創製手法を構築することを目的とし、電極に接触した絶縁性固体表面に沿って二次元的に成長する導電性高分子薄膜を研究対象としていた。疎水効果に基づく溶質(モノマー)の高濃度領域を絶縁性固体表面近傍に発現させ、疎水的モノマーを使用することおよび絶縁性固体表面の濡れ性を制御することによる導電性高分子のパターン形成を立案した。 当該年度では、本研究背景の汎用性を調べるために導電性高分子の薄膜形成と並行して行った白金薄膜形成が主軸となった。電荷密度の低い白金錯イオンも疎水的に振る舞うと考え、これを反応種とした電解析出による薄膜形成を試みたところ、絶縁性基板の濡れ性に依存性せず二次元成長による薄膜形成が進行することが分かった。これより当初の目的のひとつである溶質の疎水性と薄膜形成の関係について新たな知見が得られ、高濃度領域を発現させるために必要な溶質の疎水性は非常に高く、導電性高分子以外の適用は厳しいということが分かった。白金薄膜形成のメカニズムについても考察しており、白金の電解析出に併発する水素吸着および水素発生が白金の析出速度および析出形態に影響を与え、析出速度の異方性が生じた結果として固体表面に沿った白金析出成長が進行することが分かった。 本成果の意義は、析出反応に直接関与する白金錯イオンではなく溶液中のプロトンの濃度や電極界面への物質輸送量に白金の析出速度が依存するという点で、従来の報告にはない新たな白金の微細構造形成メカニズムを明らかにしたことである。また、高価でありながら高い触媒能を生かすため、一般的に白金電解析出は析出駆動力の小さい低い過電圧下で行いナノ粒子や薄膜などの微細構造を形成させるが、本研究は高過電圧下での微細構造形成が可能であることの一例を示したという点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたように、当該年度では主に白金薄膜形成に関する研究を行ってきた。最終的に固体表面近傍における局所的液体構造とは無関係に薄膜が形成することが分かったため、目的の焦点であった局所的液体構造に関する知見を十分に得られたとは言えない。異なる溶媒を使用した時のポリピロール薄膜の形成に関して僅かに知見が得られているものの十分であるとは言い難い。
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今後の研究の推進方策 |
疎水効果にもっとも影響を与える因子である「有機溶媒の極性」および「絶縁性固体表面の濡れ性」を系統的に変化させ、薄膜形成との関係を最優先で明らかにする。その後、膜厚を十分に薄くできるようにモノマーの濃度、種類を最適化させ、当初の研究課題の最終目的であるパターン形成に取り組む。特に、導電性高分子の二次元成長における固体表面の濡れ性のパターン認識能を、パターン間隔および薄膜の膜厚の観点から調査する。 申請書の「現在までの研究状況」に記載の通り、当特別研究員は電解析出によるポーラスシリコン電極への金属充填に関する研究を手掛けており、その背景にはナノ細孔内に形成される局所的液体状態の調整が密接に関係している。今後の研究方策として、ポーラスシリコン電極への導電性高分子充填を薄膜形成の課題と並行して行う予定である。その目的は、薄膜形成で得られる知見の汎用性を確認することにあるが、とくに有機溶媒の極性と細孔充填の挙動との関係が新しい研究対象となる。時間が許す場合は、充填した導電性高分子を焼結し鋳型であるポーラスシリコンを溶解することによるポーラスカーボン電極の作製に取り組む。
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