研究課題/領域番号 |
15J07670
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
井上 雄有輝 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | ヒト毛細血管内皮細胞 (HRMECs) / HB-EGF / CRM-197 / コモンマーモセット |
研究実績の概要 |
近年、血管内皮増殖因子 (VEGF) をターゲットにした抗VEGF抗体は優れた臨床結果を示している。しかし、抗VEGF抗体はのみでは、効果を示さない患者もいるため、新たな治療ターゲットの同定が期待されている。ヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子 (HB-EGF) は、細胞の癌化、正常な心臓機能の発現、表皮の創傷治癒などに関与していることは知られている。さらにHB-EGFはがん細胞において血管新生を誘導することは知られているが、眼内血管新生に対しての作用は明らかにされていない。 1. VEGF誘発細胞増殖・遊走に対するHB-EGFの関与の検討: ヒト毛細血管内皮細胞 (HRMECs) を用い、HB-EGF siRNAを用いることで、HB-EGFをノックダウンすることで、VEGF誘発増殖および遊走を抑制した。これにより、VEGF誘発細胞増殖・遊走においてもHB-EGFが関与している可能性が示唆された。 2. 眼内血管新生におけるHB-EGF阻害剤の効果の検討: マーモセットにおいて、レーザー照射を行うことでCNVを誘発し、HB-EGF阻害剤であるCRM-197はCNV面積およびフルオレセイン血管造影 (FA) によるFAグレードを抑制した。 3. 眼内血管新生におけるHB-EGFとVEGFのクロストークの検討: HRMECsを用い、HB-EGFおよびVEGFを添加後、p-ERK1/2の発現量について検討し、経時的なERK1/2の活性化が認められ、その活性化は2相性であることを確認した。さらに、CRM-197を用いることでHB-EGF添加5分後において、HB-EGFによるERK1/2の活性化を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は下記の実験を行い、成果を得ている。これは当初予定した年度よりも早く計画が進んでいるため。 【実験結果】 1. VEGF誘発細胞増殖・遊走に対するHB-EGFの関与の検討: ヒト毛細血管内皮細胞 (HRMECs) を用い、HB-EGF siRNAを用いることで、HB-EGFをノックダウンすることで、VEGF誘発増殖および遊走を抑制した。これにより、VEGF誘発細胞増殖・遊走においてもHB-EGFが関与している可能性が示唆された。 2. 眼内血管新生におけるHB-EGF阻害剤の効果の検討: マーモセットにおいて、レーザー照射を行うことでCNVを誘発し、HB-EGF阻害剤であるCRM-197はCNV面積およびフルオレセイン血管造影 (FA) によるFAグレードを抑制した。 3. 眼内血管新生におけるHB-EGFとVEGFのクロストークの検討: HRMECsを用い、HB-EGFおよびVEGFを添加後、p-ERK1/2の発現量について検討し、経時的なERK1/2の活性化が認められ、その活性化は2相性であることを確認した。さらに、CRM-197を用いることでHB-EGF添加5分後において、HB-EGFによるERK1/2の活性化を抑制した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、HRMECにおいてHB-EGFおよびVEGFの相互作用についてより詳細に検討し、マーモセットレーザー誘発CNVモデルにおいて、抗HB-EGFおよび抗VEGF抗体併用時の効果について検討を行っていく予定である。 具体的には、VEGF誘発細胞増殖・遊走に関して、EGFファミリーの中でもHB-EGFが特異的に関与しているか否かについて検討する。そのなかで、EGF受容体阻害薬やsiRNAを用いて、HB-EGFの切断を抑制することにより、血管新生におけるVEGFとHB-EGFとの相互作用をより詳細に検討していく。 また、マーモセットレーザー誘発CNVモデルにおいて、抗HB-EGFおよび抗VEGF抗体併用時の効果について、フルオレセインによる蛍光眼底造影でグレード評価・血管新生面積を定量することにより、その効果について検討を行っていく。
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