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2015 年度 実績報告書

2回らせん構造をもつキラル結晶の旋光性を用いたキラリティ表記法の構築

研究課題

研究課題/領域番号 15J07703
研究機関早稲田大学

研究代表者

石川 和彦  早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワードキラリティ / 2回らせん / 旋光性 / 絶対構造
研究実績の概要

2回らせん構造は、有機結晶の約70%が持つ普遍的な対称操作であり、右巻きと左巻きの対掌体が存在しうるキラルな構造である。しかしながら、キラリティの違いを反映した対称要素の表記が未だに存在せず、2回らせんのキラリティに言及した議論ができない状況が続いていた。そこで本研究は、旋光性に基づく絶対キラル構造決定手法を様々な2回らせん構造を持つ結晶に応用し、2回らせん構造をもつキラル結晶のキラリティ表記法を新規構築することを目的とした。
今年度は、L-, D-アラニン結晶(空間P212121)、硫酸トリグリシン結晶(TGS, 空間群P21)及びアラニンドープTGS(ATGS) に関して(1)各結晶の育成、(2)単結晶X線構造解析による絶対構造の決定、(3)一般型高精度万能旋光計(Generalized-High Accuracy Universal Poralimeter; G-HAUP)による結晶のらせん軸方向の旋光分散測定、(4)絶対構造と旋光分散の関係づけを行った。L-, D-アラニン結晶、TGSおよびATGSの(1)各結晶の育成、(2)単結晶X線構造解析による絶対構造の決定に成功した。さらにL-, D-アラニン結晶についてはb軸方向の(3)G-HAUPによる結晶のらせん軸方向の旋光分散測定、(4)絶対構造と旋光分散の関係づけに成功した。
以上の今年度に得られた研究成果は、Pacifichem 2015にて発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度は、D-, L-アラニン結晶、硫酸トリグリシン (TGS)及びD-, L-アラニンドープTGS(DATGS or LATGS)の育成、X線構造解析を行った。また、D-, L-アラニン結晶に関しては、b軸方向の旋光性測定に成功し、その成果をPacifichem 2015にて発表した。
D-, L-アラニン結晶、TGS、DATGS及びLATGSはいずれも室温条件下で溶媒蒸発法にて結晶育成をし、大きく、透明度の高い結晶を得た。晶癖は過去の報告と同様のものあった。アラニン結晶のX線構造解析に成功し、b軸方向の旋光性の測定にも成功した。その結果、アラニン結晶のb軸方向の直線複屈折は0.004程度で、波長依存的に減少することが明らかとなった。またL-アラニン結晶は、b軸方向において右旋性を示し、D-アラニン結晶のb軸は左旋性を示すことが明らかとなった。この結果より、アラニン結晶の結晶構造と旋光性を関係づけることに成功した。
LATGS及びDATGSの実際のアラニンのドープ量を溶液CD測定によって算出した。結果は、過去の旋光能によるドープ量の算出の報告とほぼ同じ値となり、結晶育成時の母液中アラニン濃度に比例することがわかった。また、TGS及びATGSの結晶構造解析の結果、過去の報告と等しい結果が得られ、質の良い結晶が育成できていることが確認された。しかしながら、ATGSにおいて格子内にあるアラニン分子は同定できていない。これは、ドープ量が極めて少ないことが原因であると思われる。TGSのキラリティは、グリシンのCOO面に対するCNのねじれによって容易に区別できる。種々の条件にて結晶化させたATGSを楮解析した結果、ドーパントであるアラニンのキラリティによって、ATGSのキラリティが偏ることがわかった。

今後の研究の推進方策

今後の研究では(1) L-, D-アラニン結晶のb軸方向以外の軸方向の旋光分散測定、(2)TGS及びATGSの旋光分散測定、(3)ATGSにおけるアラニン分子の位置の決定、(4)ATGSのアラニンによるキラリティ制御機構の解明を行う予定である。(1) L-, D-アラニン結晶のb軸方向以外の軸方向の旋光分散測定では、b軸方向での測定と同じ手法を用い、測定する予定である。(2)TGS及びATGSの旋光分散測定では、現状の光学系では測定が困難であることが判明したため、光学系の変更を予定している。光学系の改良後に測定する予定である。(3)ATGSにおけるアラニン分子の位置の決定では、今年度はアラニンのドープ量が少なかったために結晶構造解析ではアラニン分子の位置を特定できなかったと思われるため、今後はアラニンのドープ量が増大するような条件でATGSを育成し、構造解析をする予定である。実際に、結晶育成時のアラニン濃度や育成温度など様々な条件下で結晶を育成中である。(4)ATGSのアラニンによるキラリティ制御機構の解明では、(3)の達成に加え、アラニンに構造の似ている化合物である乳酸をTGSにドープし、その構造解析をすることによって制御機構を考察する予定である。実際に、乳酸ドープTGSの育成に取り掛かっている。」また、乳酸の他にもアミノ酸を検討している。
次年度で得られた研究成果は、国際学会等での発表を検討している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Discrimination of Chiral Crystals with Two-fold Screw Axis Using Optical Activity2015

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiko Ishikawa, Yukana Terasawa, Masahito Tanaka, Motoo Shiro, Hideko Koshima, Toru Asahi
    • 学会等名
      Pacifichem 2015
    • 発表場所
      ハワイ、ホノルル
    • 年月日
      2015-12-15 – 2015-12-20
  • [学会発表] Relationship between Optical Activity and Crystal Structure of Chiral Alanine Crystals with Two-fold Screw Axis2015

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiko Ishikawa, Masahito Tanaka, Motoo Shiro, Hideko Koshima, Toru Asahi
    • 学会等名
      Symposium on Molecular Chirality 2015
    • 発表場所
      日本、東京
    • 年月日
      2015-06-12 – 2015-06-13

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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