ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、バイオマスを原料としてバイオプロセスにより合成可能なポリエステルである。PHAの利用範囲の拡大に向けては、物性の多様化が望ましく、本研究ではPHAの末端構造を用いた構造制御によりこの実現を目指す。本年度はPHAのカルボキシ末端に付与したチオール基を介してポリエチレングリコール(PEG)と結合させ、その物性測定を行った。 昨年度までに、加アルコール分解反応により付与される末端官能基を介したPHA構造制御には、より温和な条件下での反応が望ましいとの結論に至っている。これを受けて本年度はカルボキシ末端にチオール基を有するPHAを用いた末端反応を実施し、親水性材料であるPEGの結合を試みた。これにより、疎水性であるPHAの親水化に寄与することを期待し行った。反応条件を検討し、得られたPHA-PEGの水接触角を測定したところ、57.8°であり、未反応のPHA(77.5°)よりも減少していることが確認された。ここから、末端官能基を介した反応により、材料の親水性が増したことが示された。また、PEGの分子量に応じて親水性が変化することが示唆された。 特別研究員を中途辞退させて頂いたことに伴い、本年度は9月まで研究を実施した。このため、親水化に必要な分子量を有するPEGを、PHAの生合成と同時にその末端に取り込ませる手法については検討しきれなかった。しかしながら、比較的低分子量のPEGであっても物性に変化が生じていたことから生合成の実現可能性は高いと考えており、今後検討してゆきたい。また、これまでに生合成法を検討した、エテニル基を分子鎖末端に有する低分子量PHAの利用についても引き続き検討したいと考えている。
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