研究課題/領域番号 |
15J07748
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森野 佐芳梨 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 妊婦 / 動作解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、妊婦の骨盤周囲痛軽減を目的とし、疼痛のリスク因子となりうる動作を客観的に評価し、さらに動作改善の実施を目指している。平成27年度は、妊娠時期ごとの骨盤周囲痛とそれを引き起こす動作を調査するために、275名の妊婦を対象として妊娠期から産後にかけての縦断研究を実施した。これにより、今後着目するべき動作として歩行に加えて椅子の立ち座りのような日常生活動作が抽出され、妊娠時期と疼痛部位ごとの疼痛誘発動作が分かり、この問題に関する基礎資料を作成することができた。 また、動作評価デバイスに関して、健常成人を対象として慣性センサを使用した屈曲や回旋等の複合動作について計測実験を行った。このデータを用いて、計測が想定される環境も考慮しながら、動作評価の最適な方法を考案している。慣性センサにて動作を評価するためには、まず、センサから得られる加速度、角速度および地磁気データから、動作評価に必要な角度情報を得る必要がある。特に、静止状態での姿勢角の算出には加速度、角速度、地磁気データの組み合わせにより複数の算出方法があり、その各々に特性がある。これより、計測実験のデータを用いて、各特性と日常生活動作における身体の動的範囲やスピード特性とを照らし合わせる作業を行った。また同時に、センサから得られるデータや、角度等の必要な情報に変換した際にデータ情報に入るノイズを除去する過程の考慮も必須となる。これに関しては、特に動作が加わった際の動的角度への影響が大きく、適切なフィルター処理方法を検討している。さらに、この慣性センサを用いて妊婦26名を対象とした動作計測実験を実施した。この際、質問紙による骨盤周囲痛の調査および骨盤アライメントの計測も行っており、これを用いることで、妊娠女性における疼痛誘発動作の動作特性を明らかにすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初めにデバイスの開発を行い、その後妊婦対象の調査へと進行していく予定であった。しかし、妊婦の骨盤周囲痛と疼痛誘発動作に着目したリスク因子に関しては、解明されていない点が多い。デバイス開発のためには、具体的なセンサの装着位置や計測環境、データの取り扱い方法を考案するために、ある程度の計測対象動作の抽出が必要である。そこで本年度は、縦断研究により妊娠時期と疼痛部位ごとの疼痛誘発動作の調査を行った。これにより、妊娠女性における疼痛が誘発されやすい歩行中の骨盤の動作特性の具体的な抽出を終えることはできなかったものの、その後の調査時に行う予定であった歩行以外の疼痛誘発動作の調査を先行して行うことができた。 また、これに付随して、健常成人を対象とした動作実験に関しても歩行のみならず、その他の日常生活動作を考慮した複合動作実験を行った。これをもとに、デバイス開発後に行う予定であった、歩行以外の動作への応用も視野に入れたうえでのデバイス開発を行っている。さらに、妊婦を対象とした動作実験および疼痛情報・骨盤アライメントに関する調査に関しても、より実践に即した複数の動作に関して計測を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、動作計測実験によるデータを用いて、慣性センサによる複合動作計測およびセンサ装着位置も含めた測定方法を検証し、動作の可視化も含めたデバイス開発を進める。さらに、妊婦における疼痛誘発動作の動作特性を具体的に明らかにし、疼痛改善プログラムへとつなげる。
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