研究課題/領域番号 |
15J07767
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志村 智也 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 全球気候モデル / 波浪 / 海面粗度 / GCM / 波形勾配 / 波齢 |
研究実績の概要 |
気候変動に関する影響評価研究の多くは,気候モデル (GCM) による気候計算結果をもとに行われる.波浪は気候システムから海上風を通して一方向の影響を受けるだけではなく,気候システムに対するフィードバック効果が指摘されている.しかし,既往のGCMにおいて波浪は陽に考慮されず,海面は風速依存の粗度として単純に扱われている.そこで,GCMと波浪モデルを用いて大気-波浪間の相互作用を考慮した気候計算を行い,気候システムに対する波浪の影響を評価することを目的として研究を行った.
全球大気気候モデルには気象研究所で開発されたMRI-AGCMを,波浪モデルには米国海洋大気庁のWAVEWATCH IIIを用いた.大気-波浪間の相互作用として,波形勾配および波齢に依存した海面粗度を導入した.MRI-AGCMから風速を,WAVEWATCH IIIからは粗度を交換して大気波浪結合気候計算を実施した.コントロール実験として粗度を風速のみで表現した式を用いた大気単独計算も実施した.
海面粗度に波形勾配および波齢に依存した2 種類の式を用いて感度解析を行った結果,海面粗度(抵抗係数)気候値は,波形勾配を用いた場合にはうねりの卓越度合に応じた,波齢を用いた場合には風向の定常性に応じた空間分布をとることがわかった.その海面粗度気候値の違いに伴い,波浪を考慮しない計算に比べて,海上風速気候値に1m/s 程度の差が生じ,特に低緯度で顕著であり,15%程度の差となることがわかった.熱帯低気圧経路を例にげ,上層の気候値についても有意な影響が及ぶことを示し,波浪結合の有無が気候モデルによる気候計算結果に広く影響することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
波浪結合全球気候モデルによる気候計算を計画通り実施できたため,おおむね順調に研究を進展させたと評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本年度得られた波浪の気候システムへのインパクトについてメカニズムを明らかにする.
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