気候変動に関する影響評価研究の多くは,気候モデル (GCM) による気候計算結果をもとに行われる.波浪は気候システムから海上風を通して一方向の影響を受けるだけではなく,気候システムに対するフィードバック効果が指摘されている.しかし,既往のGCMにおいて波浪は陽に考慮されず,海面は風速依存の粗度として単純に扱われている.そこで,GCMと波浪モデルを用いて大気-波浪間の相互作用を考慮した気候計算を行い,気候システムに対する波浪の影響を評価することを目的として研究を行った.
大気-波浪間の相互作用として,波浪に依存した海面粗度を導入し,全球大気気候モデルおよびスペクトル型波浪モデルを用い波浪-大気結合全球気候計算を行った.このとき,波形勾配および波齢に依存した海面粗度を用いた計算をそれぞれ実施した.いずれの気候計算においても,波浪を考慮しない計算と比べて,低緯度て海面粗度の気候値が小さくなった.これはそれぞれの気候計算において,低緯度でうねりが卓越することにより波形勾配が小さくなるため,または風向の定常性により波齢が大きくなるためである.
上記の海面粗度の気候値の低減は,熱帯域の海面風速の増加とハドレー循環の強化を介して,10~20%程度の降水量の違いにつながることがわかった.また,うねりに依存した海面粗度は,風波のみに依存したものと異なる循環場の変化を示すことがわかった. 以上の結果をまとめて,土木学会論文集B2(海岸工学)およびJournal of Geophysical Research: Oceans誌に発表した.
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