研究課題/領域番号 |
15J07773
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森岡 浩太郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 繊維複合材料 / 展開シミュレーション / 素材形状の推定 / 型形状の最適化 |
研究実績の概要 |
繊維複合材製品の設計支援技術に関して、本年度は繊維方向を考慮した設計モデルの展開シミュレーション手法の開発、及び有限要素法を用いた型の最適形状の推定手法の検討、の2点について取り組んだ. 設計モデルの展開シミュレーション手法については、繊維複合材の設計・製造において重要な繊維方向のデザインおよび、設計した製品形状を得るために必要な素材形状の推定を取り扱うことのできる手法を開発し、共同研究先の企業において実際の現場での試用を行った.研究者が提案した手法は、設計データの幾何学的な情報を用いて繊維素材の変形現象を簡潔にモデル化している点に特徴があり、実際の現場で用いる複雑な形状の製品モデルについて繊維方向のデザインと素材形状の推定を高速に行うことができることが示せた.その一方で提案手法は変形シミュレーションとしての精度が十分でなく、変形状態のより詳細な予測としての用途に用いるには課題があることが分かった. 型の最適形状の推定手法は、上記の展開シミュレーションにおける問題点を踏まえたものであり、有限要素法による精度の高い変形シミュレーションを活用して設計支援を行うことを目的としている.具体的には有限要素法によるシミュレーションにより推定される素材の変形形状をもとに、変形加工に用いられる型の形状の最適化を行う.現時点での進捗としては、繊維素材の型変形を再現する有限要素シミュレータを実装し、シミュレーション結果の定性的な評価を行った.またCT画像を用いて繊維素材の3次元的な変形状態を定量的に評価する手法の開発を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、展開シミュレーションを用いた簡便な繊維素材の変形予測手法を提案し、実際の設計現場での試用を通じフィードバックを得た.その結果、提案手法の課題および設計現場における具体的なニーズを把握することができた.当初の計画では繊維素材の変形をシミュレートする新たな手法を提案することを目的としていたが、フィードバックに基づいて提案手法の見直しを行った結果、既存の変形シミュレーションを用いてより応用的な用途に対応できる手法の研究を行ったほうが実用面と学術面の両面において有意義であるという結論に達した.この研究の方針の転換に伴い、新たな方針の下で研究を行うために必要な技術の取得および実現可能性の基礎的な検討が必要となり、当初の予定からの遅れが発生した.
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今後の研究の推進方策 |
まず本年度実装を行った繊維素材の変形シミュレーションの再現精度の評価を行うために、CT画像を用いた3次元的な変形挙動を定量的に評価する手法の開発を行う.具体的には、繊維素材を構成する繊維束の方向を抽出することで、変形した繊維素材の異方性がどのように変化しているかを定量的に計測する.また繊維素材の全体形状を抽出して、形状の変化に関しても定量的に計測を行う. 上記の手法を用いて変形シミュレーションの再現精度が必要精度に達していることが確認できたら、次に有限要素法を用いた型形状の最適化の手法の研究を行う.具体的には、設計される製品の形状が複雑になると、型の形状と変形加工した素材形状との間にずれが生じてしまうという問題があり、この問題を解決するために設計した形状から最適な型の形状を推定する手法の提案を行う.有限要素法により繊維複合材の準静的な変形をシミュレートして、シミュレートした結果を基に型の形状の最適化を行う方針である.
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