第一年度に実施した水平二方向静的載荷実験では,面外方向の変形量を面内方向の変形量の1.5倍,3.0倍とした試験体において,面内方向の最大耐力が面外方向変形を作用させなかった試験体と比較して,それぞれ8%,18%低下することが明らかとなった。第二年度は前年度に実施した実験を対象として,面外方向変形の影響を考慮することができる簡便な面内方向せん断終局強度評価手法を提案し,本手法により前年度の実験で得られた最大耐力の低下率がおおむね捉えられることを示した。 第三年度は,まず第一年度に実施した実験結果の追跡を目的として,有限要素解析モデルを作成した。解析結果は,実験時に得られた面内方向・面外方向の水平荷重―層間変形角関係に加えて,実験においてひずみゲージで計測した柱主筋のひずみ分布などについても良好に追跡することができた。作成したモデルをもとに面外方向変形量を変数とした解析を実施し,最大耐力,壁脚でのせん断力負担状況等について分析を行った。解析結果からは,今回検討を行った面外方向変形倍率4倍程度までほぼ線形的に最大耐力が低下することや,その間も壁板と圧縮柱間でのせん断力の負担割合は大きく変化しないことなどが明らかとなった。また,得られた解析結果をもとに第二年度に提案した評価手法の算定精度についても検討を行い,面外方向層間変形が面内方向層間変形の3倍程度までであれば,提案手法から得られる最大耐力の低下率が解析結果と良好に対応することを確認した。
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