研究課題
本研究は、我々が過去に報告したシリコン表面での金ナノ構造の局所選択的無電解成長法を利用した、チップ増強ラマン散乱(TERS)用の新規探針作製手法に関するものである。本手法は、市販のシリコン製原子間力顕微鏡(AFM)探針先端に集束イオンビーム(FIB)を照射した後、塩化金酸(III)水溶液に浸すことで探針の先端のみに金ナノ構造を成長させることができる。このような探針は、従来TERSに用いられてきた探針に比べて、可視域の光でより効果的な局在表面プラズモン共鳴の励起が可能であることから、TERS測定における空間分解能やラマンシグナルの増強度の向上が期待できる。当該年度における研究成果は下記とおりである。1、探針作製手法の改良上記の作製手法では、シリコン製AFM探針先端へのFIBの照射によって先端部が破損しやすくなり、探針作製の再現性に問題があった。そこで、あらかじめFIBで鋭利な先端を予め切り落とすことで探針先端の強度を確保し、探針作製の再現性を改善した。また、得られた探針はTERS測定において、サンプルとの接触を数千回繰り返しても先端に破損や変形が見られず、イメージング等の測定に十分な強度を有していることを確認した。本手法に関して特許を1件出願し、国際会議で1件の発表を行った。2、ラマンシグナル増強の金ナノ構造サイズ依存性100 nm~1 umの金ナノ構造を先端に持つ探針を用いて、波長633 nmの励起光を用いて金薄膜上のカーボンナノチューブのTERS測定を行い、ラマンシグナル増強の金ナノ構造サイズ依存性を調べた。その結果、100~200 nmのサイズでは安定的にラマンシグナルの増強が確認されたのに対して、500 nm以上のサイズではほとんど増強が見られなかった。このことから、100~200 nmの金ナノ構造がこの系において最適なサイズであることが明らかになった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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