長寿遺伝子SIRT1の発現を増強する乳酸菌T2102株が示す結腸がん細胞の増殖抑制効果について、その分子基盤を明らかにするとともに、多面的解析及びin vivo解析を通じて、T2102株のがん抑制能を評価することを目的として研究を行った。分子基盤としては、SIRT1の下流因子であり、結腸がん細胞の増殖を促すβ-カテニン及びβ-カテニンの下流因子の一つで、テロメア伸長酵素であるテロメラーゼについてもヒトテロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子(hTERT)を対象として調べ、T2102株が及ぼす大腸ガン由来細胞株の増殖抑制と細胞老化に関係性があることを明らかにした。また、多面的解析としては、DLD-1細胞の接触阻止能、軟寒天培地上でのコロニー形成能、及びヌードマウスに接種後の造腫瘍能について検証を行い、有意な効果があることを明らかににしている。本年度は、マウス試験におけるさらなる評価方法の構築ならびに抗老化関連遺伝子の発現変化やヌードマウスの再現性の確認を行った。まず、マウス試験であるが今後の指標として大腸ガンモデルマウスであるAPC-/-マウスを用い、その評価方法としてポリープ数の増減、腫瘍部位の切片組織を用いてβ-カテニンタンパク質の免疫染色法を行い、腫瘍形成能に対する効果について検証することとする。また、T2102株によるhTERT発現を抑制するps38 MAPKの発現量に対する効果について免疫染色法により検証を行った結果、T2102株によりp38の発現が増強する傾向が確認できた。さらに、ヌードマウスにおいて腫瘍抑制効果についての再現性の確認を行ったとともに、摘出した腫瘍部位からのタンパク質及びRNAの抽出について今後検討することとする。
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