研究課題/領域番号 |
15J07813
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
中村 伸子 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ウィーン / ハリウッド / E. W. コルンゴルト / 米国議会図書館 / 20世紀の音楽 / 映画音楽 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、米国議会図書館(以下LC)音楽部門所蔵のコルンゴルト・コレクション(以下KC)の全貌を明らかにし、20世紀のウィーンとハリウッド(ロサンゼルス)を中心に活動した作曲家E. W. コルンゴルト(Erich Wolfgang Korngold, 1897~1957)の研究の今後の基礎を作ることである。ユダヤ系の家庭に生まれたコルンゴルトは1938年のナチス・ドイツによるオーストリア併合により亡命を余儀なくされ、ロサンゼルスに移住したため、彼に関する資料はヨーロッパとアメリカの各所に散らばっており、作曲家研究における基礎である資料研究が全く進んでいない。 平成28年度には、7月から9月まで、科学研究費によってワシントンD.C.に滞在し、LC音楽部門所蔵のコルンゴルト(1897~1957)関連一次資料(楽譜、手紙、書類など)の調査を行った。LCには、これまで所在が確認されていたKCの他に、2012年に寄贈された膨大な数の資料があることが今回新たに分かった。本滞在中にはKCおよび新資料のほぼすべての資料に目を通すことができた。本調査と、筆者のこれまでの調査から、LCに所蔵されているコルンゴルト関連資料は世界的に見て群を抜いて最大のものであることが確認された。これらの資料の所在、内容、状態などを整理し、今後のコルンゴルト研究の土台を築くことに大きな価値があることを筆者は改めて確信した。 一方で新たな課題として、(1) LC以外に所蔵されている資料についてある程度把握することが必要であること、(2) LC所蔵資料を含むコルンゴルト関連一次資料を読み解くために、同時代の文化的状況を把握する必要があること、の2点が浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、(1) LC所蔵の各資料の物理的状態の調査、(2) LC所蔵資料の目録の作成、(3) LC所蔵の各資料の相互関係の考察、(4) 従来の理解と新たな発見との相違、以上の4点の考察を常に横断的に行うとしていた。現在までに、この4点をすべて行うことができており、とりわけ(1)と(2)に関しては、平成28年度に行う予定であった作業まで進めることができ、比較的順調である。一方(3)と(4)についてはやや順調ではない。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究により、今後は(1) LC以外に所蔵されている資料を把握すること、(2) 同時代の他の作曲家や文化的状況について把握する必要があることが新たな課題となった。コルンゴルトのウィーン時代(1938年頃まで)とハリウッド時代(1938年頃以降)の両方を扱うことは時間的に困難であるため、本年度はウィーン時代に絞って研究を進める。したがって、平成28年度は当初の予定を変更してウィーンに滞在し、これらの課題の解決に当たる。 (1)に関しては、オーストリア国立図書館、ウィーン市庁舎図書館、楽友協会アルヒーフ、モラヴィア博物館音楽部門コルンゴルト・センター(チェコ、ブルノ)をはじめ、ヨーロッパの図書館および研究機関に所蔵されているコルンゴルト関連資料を調査し、目録を作成する。 (2)に関しては、20世紀前半、とりわけ両大戦間のコルンゴルトの周辺の音楽文化状況を把握するために、文献調査と資料調査(演奏会記録、批評)を行う。
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