これまでに検討してきた「アフィニティ駆動型アシル転移反応法」(AGD)化学ではAcyl Donorとして使われているチオエステルの反応性が高く、触媒なしでも非特異が多く発生し、細胞内など複雑な環境ではつかえない。チオエステルの脱離基のpKaを調整することにより、その反応性を制御することに成功したが、反応性を落としたチオエステルAcyl DonorはDMAPによる活性化が低くまたは無くなる。そのため、現段階では細胞環境ではFKBP12しかラベル化ができない。以上の問題点を解決するためには、pH中性領域でより求核性の高い触媒とより求電子性の低いAcyl Donorの探索が必要である。 中性領域で高い求核性を持つPyridine-oxime(Py-oxime)を触媒として見出し、Acyl Donorとして求電子性を落とし、且エステラーゼに耐性を持つN-alkyl-N-acyl sulfonamide(NASA)をみいだした。このPy-oxime触媒とNASA型Acyl Donorの組み合わせで新しいタンパク質ラベル化法を開発した。新たに開発したこのoxime化学は従来のAGD化学と比べ、pH中性領域でのラベル化反応が向上した。細胞ライセートや細胞表層のような夾雑系でのラベル化では、標的タンパク質への高反応効率を保つうえ、標的以外のタンパク質の非特異ラベル化を抑えることができた。選択性、ラベル化効率が向上したことにより、内在性細胞表層膜タンパク質の流動性の算出に成功した。 最後に、oxime触媒を二つつけることにより、さらなるラベル化効率の向上を見出し、マウス海馬、小脳スライスのAMPA受容体の特異なラベル化に成功した!AGD化学で達成できなかった組織上の特異的なラベル化に成功した。
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